『俺はお前を殺したくないんだ』
その言葉が頭の中で何度もリピートされる。
殺したくないなら殺さなければいいのに。
私のことを好きならずっとそばにいればいい。
一緒に過ごせばいいのに。
その言葉を伝えようとしたけど、口がうまく動かない。
だって……
クロは見たこともないような悲しい顔をしていたから。
そんな顔、しないでほしい。
ずっと笑っててほしい。
笑顔のクロが大好きだから。
むにゅっ
私は、クロのほっぺを両手でおさえた。
私はクロに怒鳴った。
クロは驚いた顔でこちらを見ている。
今、私はクロと笑い合っていたい。
この夏祭りを存分に楽しみたい。
最後かもしれない今日を、笑顔で過ごしたい。
だから……
ニコッ
私はクロにうつるように、満面の笑みを見せた。
クロに笑ってもらえるように。
その願いは届いた。
クロは、満面の笑みで私の名前を呼んだ。
この笑顔が見た瞬間、幸せな気持ちになった。
もうすぐ花火が始まる。
きっと、これが最後の花火なんだろう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。