第12話

story twelve
254
2018/07/18 12:46
『俺はお前を殺したくないんだ』
その言葉が頭の中で何度もリピートされる。
殺したくないなら殺さなければいいのに。
私のことを好きならずっとそばにいればいい。
一緒に過ごせばいいのに。
その言葉を伝えようとしたけど、口がうまく動かない。
だって……






クロは見たこともないような悲しい顔をしていたから。
ひらみ
クロ……
そんな顔、しないでほしい。
ずっと笑っててほしい。
笑顔のクロが大好きだから。
ひらみ
……
むにゅっ
クロ
!?
私は、クロのほっぺを両手でおさえた。
ひらみ
ばかじゃないの?今お祭りを楽しんでんだから、そんな悲しい顔すんな!
私はクロに怒鳴った。
クロは驚いた顔でこちらを見ている。
今、私はクロと笑い合っていたい。
この夏祭りを存分に楽しみたい。
最後かもしれない今日を、笑顔で過ごしたい。
だから……
ひらみ
クロ……
ニコッ
私はクロにうつるように、満面の笑みを見せた。
クロに笑ってもらえるように。
クロ
ひらみ
その願いは届いた。
クロは、満面の笑みで私の名前を呼んだ。
この笑顔が見た瞬間、幸せな気持ちになった。
ひらみ
じゃあ行こっか!
クロ
うん!
もうすぐ花火が始まる。
きっと、これが最後の花火なんだろう。

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