第13話

story thirteen
239
2018/07/25 14:05
たしか、8時に花火が始まるんだよね。
携帯で時計を見てみた。
そこには「7時53分」と書いてある。
あと7分か……
これが終われば、私の人生も終わる。
怖くなんてなかったのに、今となってすごく怖くなってきた。
死ぬなんて実感したことないもん。
家族、友達、そしてクロ。
みんなとは明日から会えなくなるんだ。
なんか、死ぬってこんなにも残酷なんだな。
クロ
もうすぐ?
ひらみ
え?なにが?
クロ
花火
ひらみ
あー、もうすぐだよ
クロ
花火なんて、生まれて初めて見るなぁ
ひらみ
うそ!?そうなの!?
クロ
噂は聞いたことあるよ、人間が作ったもののくせにすごい綺麗だって
ひらみ
くせにって笑笑
やっぱり死神って、人間のこと見下してるよね…笑笑
女の人
ねぇ!いつ始まるの?
男の人
もうすぐだよ!きっと!
女の人
楽しみだね!
男の人
ああ!
となりのカップルが楽しげに話している。
私たちって、周りから見たらカップルに見えたりするのかな?
その時、パーーンと音がした。
と同時に綺麗な花火が打ち上がった。
クロ
おお!
ひらみ
はじまった!
次々に花火が打ち上がって行く。
やっぱり、花火って綺麗で感動するなぁ。
クロ
綺麗だな
ひらみ
でしょ?
クロ
ああ、こんなの見たことない
ひらみ
え?
クロの目から涙が流れてきた。
クロ
こんなに、心が洗われたのは初めてだよ
死神の流す涙。それは、今まで見た涙で1番綺麗で優しい涙だった。
ひらみ
クロ……
クロが目をゴシゴシとこすった。
クロ
なーに見てんだよ、変態
ひらみ
うわ!変態って!
クロ
男をジロジロ見るとか変態だろ
ひらみ
クロは男じゃなくて死神でしょ?
クロ
今は男だし
ひらみ
でも私は変態じゃないし!
クロは私の頭にぽんっと手を置いた。
クロ
どうだか
そしてニカッと笑った。
ドキッ
その笑顔はずるい。
私はプイッとそっぽを向いた。今顔を見られるとやばい。きっと私の顔は歪んでいる。
クロ
ほら、見ろ!おっきー花火が上がってるぞ!
本当だ……本当に綺麗だなぁ。
アナウンス
次でフィナーレです!!
というアナウンスが流れた。
その瞬間、大きくて、いろんな色で、1番長くて綺麗な花火が上がった。
ひらみ
わぁ!
クロ
……き…だ……
ひらみ
ん?
クロが何かをつぶやいてたけど、花火の音が大きすぎて聞き取れなかった。
ひらみ
なに?もう一回言っ……
だが、そこにはクロの姿がなかった。

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