無料ケータイ夢小説ならプリ小説 byGMO

50
2019/08/28

第7話

3つのVサイン
いつ、どこで間違えたのだろうー?
掛け違えたボタンのように、噛み合わない、約束をしてしまった時だろうか。
それとも。

私とまどかが出会ったこと、それが、間違いだったのだろうかー


答えは、今日も出ない。



凪音さんに協力することになった次の日の放課後。
僕らは。
雪川葵
雪川葵
…ねえ、凪音さん
凪音柚葉
凪音柚葉
何?
雪川葵
雪川葵
…何で、図書室なの…?
凪音柚葉
凪音柚葉
え、雰囲気?
雪川葵
雪川葵
……
ちょっと、いや大分心配になる答えだった。
僕らは『高村さんを助ける会』として、具体的にどうするかを話し合うことにした。
場所はどうするのと聞けば、ドヤ顔でいい場所があるとかなんとか言っていたから信用したけれど。
まさか放課後の図書室に無断で入り込むとは思っていなかった。
僕は今日学んだ。
凪音さんがドヤ顔をしている時は、絶対に信用してはならない、と。
凪音柚葉
凪音柚葉
それで、君、何かいい方法ない?
雪川葵
雪川葵
そんな急に言われても…。
まあ、方法としては、大まかに分けて3つかな
凪音柚葉
凪音柚葉
ふうん
雪川葵
雪川葵
まず1つ目、加害者ーつまり高村さんをいじめている女子グループを止める
少し首を傾けて凪音さんが呟く。
凪音柚葉
凪音柚葉
ああ、でもそれ、無理だよね
雪川葵
雪川葵
うん、1つ目は無理
凪音柚葉
凪音柚葉
じゃあ2つ目は?
雪川葵
雪川葵
2つ目は、高村さんが、嫌われないように性格とかを変える。まあこれだと高村さんは本当の意味では助けられないから駄目
凪音柚葉
凪音柚葉
だね
雪川葵
雪川葵
3つ目、これが1番妥当かな。
傍観者ーつまり僕達みたいな人に協力を要請する。まあ妥当だけど難しいよこれは
凪音さんはううんと唸る。
凪音柚葉
凪音柚葉
そうだね。
でも、それしかないか。
じゃ、その路線で行こう。
あとは具体的な作戦だね
そうだとしても。
傍観者を動かすとしても大変だ。
じゃあ、どうすれば…。
……あ。
凪音柚葉
凪音柚葉
お、閃いた?
にやにやして凪音さんが言う。
僕は案外顔に出やすいタイプなのかもしれない。
雪川葵
雪川葵
まあ思いついたのは思いついたけど。
でも、これは凪音さんの協力が絶対に必要なんだよ。
…結構、目立つことになるよ
凪音さんは僕の言葉にふんと鼻を鳴らした。
傲慢に、誇らしげに。
にやりと唇の片方を持ち上げて、凪音さんが笑う。
凪音柚葉
凪音柚葉
望むところ。英雄でもヒーローでも、なってやろうじゃないの






その2日後。
朝、教室に入ってきた高村さんはー
クラスメートB
クラスメートB
陽花ちゃん!ごめん!
クラスメートA
クラスメートA
高村、昨日まで悪かった!
クラスメートC
クラスメートC
ほんっとにごめん!!
という具合に沢山のクラスメートに囲まれていた。
高村陽花
高村陽花
え、え、きゅ、急にどうしたの皆…
高村さんも、目をパチパチさせて混乱している。
まあその気持ちは分かる。僕も、ちょっと、いや、ほんのちょっとびっくりしたし。


昨日の放課後の話だ。
僕は、仲のいいクラスメートの男子に、若干緊張しながら話しかけた。
2人きりの教室は、僕の緊張を高めるようにしんとした空気で満ちていた。
雪川葵
雪川葵
あ、あのさ、高村さんっているじゃん
クラスメートA
クラスメートA
あー、おう。
高村がどうかしたのか?
気まずそうに答えた友達。
やっぱり、傍観者でいることに少し懸念があるのだろう。だって、元々良い奴だから。
雪川葵
雪川葵
高村さんをいじめてるグループあるじゃん。ほら、女子の。
クラスメートA
クラスメートA
ああ、あの4人組のな
少し嫌そうに言った友達に、やっぱり、と心の中で納得する。
やっぱりあんまりあの人達のことが好きではないようだ。やっぱり、この、僕の友達は、人気者であると同時に良い奴なのだ。
雪川葵
雪川葵
なんかさ、仲間割れしてるらしいよ。
高村さんをいじめたくない人がグループの中にいたらしくて。それで、分裂しそうなんだって
クラスメートA
クラスメートA
えっマジで?
…じゃあ、もう、いいのかな
雪川葵
雪川葵
何が?
分かっていて尋ねた。
クラスメートA
クラスメートA
ほら、その…高村に、謝ったりしたいなって…。あいつらが仲間割れしてんなら、もう、こういうのも終わるかなって…
よし!
心の中でガッツポーズをする。計画通りだ。
雪川葵
雪川葵
うん、終わると思うよ。
あ、そうだ
さも今思いついたかのように口を開いた。
雪川葵
雪川葵
この機会に皆で謝ればいいんじゃないかな?ほら、僕達みたいな人、まだいると思うし
クラスメートA
クラスメートA
そっか…そう、だよな。
じゃ、俺、皆に声かけとくわ!
任せとけよゆっきー!
瞳にやる気の光が灯った友達。
よし、これで僕の仕事はバッチリだ。
あとは明日どうなるかだ。ここは、この友達の力に頼るしかない。
クラスメートA
クラスメートA
あ、そういや女子グループの分裂とかって誰からの情報?もしやゆっきー?
友達の考えに苦笑する。
そんな訳がないだろう。普段の僕だったら、女子グループの事情まで知ろうとしない。
雪川葵
雪川葵
凪音さんからだよ
僕の答えに友達は驚いたように目を見開いて呟く。
クラスメートA
クラスメートA
ゆっきーって凪音と仲良かったっけ?
僕は肩をすくめた。
そんなの、僕にだって分からないんだよ。
雪川葵
雪川葵
さあね



そして、現在に至るのである。
クラスメートA
クラスメートA
俺ら、高村に謝りたかったんだよ。
見て見ぬフリとかしてごめん!!
僕に協力してくれた友達が頭を下げると、他の人も口々にごめんと言って頭を下げた。
高村陽花
高村陽花
え、いや、いいよ、大丈夫だよ…!
顔の前で両手をパタパタと振っていた高村さんの動きが、不意に止まった。
まるで、誰かの言葉を思い出したように。
凪音さんのいる方向を見て、微かに笑った。
ああ、きっと、凪音さんの言葉だ。
高村陽花
高村陽花
…大丈夫、ではないけど…。
…辛かったのは、事実だし…。
…でも…皆の仲間に入れてくれるんなら、嬉しい、かな…
ほんのりと紅く頬を染め、高村さんは微笑んだ。
クラスメートA
クラスメートA
もちろんだぞ!
クラスメートB
クラスメートB
そうだよ!ていうかこっちからお願いしたいぐらいだよ〜
クラスメートC
クラスメートC
そうそう!ね、陽花ちゃん今度どこか遊びに行こ〜っ
クラスメートB
クラスメートB
こらこら陽花ちゃん困ってんじゃん!
ちょっとずつだよちょっとずつ!
周りの賑やかな声に嬉しそうに笑う高村さんの姿から目を離して皆がわいわい盛り上がっている内に、離れて見ている凪音さんのもとへそっと近づく。
雪川葵
雪川葵
凪音さん
凪音柚葉
凪音柚葉
ん、何?
そう、ずっと前から気になっていたのだ。
雪川葵
雪川葵
もしかして、あのグループを分裂させたのって…凪音さん?
凪音さんは肩をすくめて皮肉げに言う。
凪音柚葉
凪音柚葉
まさか。私はグループの綻びを利用しただけだよ
雪川葵
雪川葵
綻び?
凪音柚葉
凪音柚葉
そ。あそこにいる、ほら、ポニーテールの子いるじゃん
高村さんの近くに立っている少女。
気まずそうに俯いていたが、高村さんに笑みを向けられて、安心したような、嬉しそうな、泣きそうな、色んな感情の混ざった顔で笑い返している。

驚いた。
あの少女はー
雪川葵
雪川葵
あのグループの人…だよね
凪音さんが小さく頷く。
凪音柚葉
凪音柚葉
けどね、あの子、苦しんでたんだ
雪川葵
雪川葵
苦しん…でた?
凪音柚葉
凪音柚葉
そう。あの子も、もういじめたくない、って。話を聞いてあげて、ちょっとあのグループにアドバイスしてあげただけだよ、私は
それだけ、って…。
凪音さんは、人を操るプロかもしれない。
凪音柚葉
凪音柚葉
きっと、あのグループの他の子も、そのうち分かるよ。自分のしたことの重大さを。それを償おうとする意思が、あの人達にあると思う。そう信じてるから
ーやっぱり、凪音さんはすごい。
不意に、高村さんがこちらを見た。
柔らかく微笑んで僕らに小さくVサインを送った。
だから、僕らも。
凪音さんは誇らしげに、僕は控えめに、Vサインを高村さんに送った。