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2019/08/30

第8話

いつかの日の約束
高村陽花
高村陽花
凪姉さん!雪兄さん!
凪音柚葉
凪音柚葉
…その呼び方やめてって何回も何回も言わなかったっけ
雪川葵
雪川葵
ていうか何だよ姉さんと兄さんって
高村陽花
高村陽花
えーっ姉さんは姉さんだし兄さんは兄さんだから変えられないよー
中学に入って初めての夏がやってきた。

高村さんー陽花を助けて以来、僕は陽花と親しくなった。
そして陽花も、凪音さんと僕にくっついてくるようになった。しつこいしうるさいが、まあこんなのもたまにはいいだろう。
…たまにはだけど。
凪音柚葉
凪音柚葉
で、陽花、どうしたの
溜息をつきつつ凪音さんが聞く。
青空の光の差し込む放課後の教室。
3人以外誰もいないからか、何だか秘密基地みたいな感じがする。
高村陽花
高村陽花
凪姉さんと雪兄さんは夏休み暇っ??
雪川葵
雪川葵
暇だけど…え、何、ぼっち殺し?
高村陽花
高村陽花
違うよーっ!
凪音柚葉
凪音柚葉
私も…部活少ないし、旅行行く予定もないから暇だけど
高村陽花
高村陽花
ほんとっ!?
目を輝かせて陽花が身を乗り出す。
何だか、今日は陽花の様子がおかしい気がする。
いつもより、ほんの少しだけ目が揺れている。
迷っているように、焦っているように。
哀しそうに。
雪川葵
雪川葵
なんか、今日陽花変じゃない?
高村陽花
高村陽花
え、そそそそんなことはないよー…
凪音柚葉
凪音柚葉
嘘つくの下手か
白い目をして凪音さんが冷たく突っ込む。
凪音さんの冷たい視線に負けたように陽花が肩を落とす。ガックリ、という感じだった。
こっちはビックリだ。
あれで嘘をついていたつもりだったのか。
雪川葵
雪川葵
もしかして、僕らを呼んだことに関係あったりする?
そう聞くと陽花はあさっての方向を向いて笑った。目も合わせようとしない。
高村陽花
高村陽花
…何のことだろうなー…あはは…
雪川葵
雪川葵
ん?何か言った?
僕は軽く圧をかけてみた。
陽花は分かりやすく青褪めた。
え?そんなに圧はかけてないよ?本当だよ?
高村陽花
高村陽花
ご、ごごごめんんんっ!
だから命だけはあああ!!
雪川葵
雪川葵
僕は悪魔か
凪音柚葉
凪音柚葉
え、そうじゃないの?
雪川葵
雪川葵
……
僕の視線に気づかないフリをして凪音さんは陽花の方を向いた。
僕の視線の方向にいた陽花が青褪めてペコペコと頭を下げた。いや陽花じゃないって。
当の本人ー凪音さんは見事にスルーしているが。
凪音柚葉
凪音柚葉
で、何か用だったんだよね。
どうしたの?
高村陽花
高村陽花
あー…えっとお…そのう…
歯切れの悪い言葉だった。
なるほど、様子がおかしいのはその用件のせいか。
今日学校に来て自分の下駄箱を覗くと、なんと紙が入っていた。そこにはこんなことが書いてあった。
用があるから放課後教室に残って!!
お願いします!!!!  陽花
凪音さんにも同じものが入っていたらしい。
お願いというか懇願というニュアンスだったのが気になっていたのだが…。
言いにくいようなことだったのか。
それなら説明がつく。
高村陽花
高村陽花
早見はやみまどかっていう…1年3組の女の子がいるんだけど…
僕は小さく首を傾げた。
知らない人だった。丘小の人だろう、多分。
見ると凪音さんも僕と同じように首を傾げていた。
陽花は俯いていた顔を上げてはっきりと言った。
高村陽花
高村陽花
まどかを、何の事情も伝えずに私のところに連れてきてほしいの!
………はい?
雪川葵
雪川葵
はあ?
あ、いけない。
つい、はあ?とか言っちゃった。
凪音さんも怪訝そうに眉をひそめている。
凪音柚葉
凪音柚葉
どういうこと?
陽花は、また俯いた。
顎までの茶髪で顔が隠されて表情は分からない。
そして、それを想像する想像力も、僕にはない。
高村陽花
高村陽花
…私…まどかに、謝らなくちゃ、いけないの。
でも…まどかは、優しい、から…。
きっと、私と会ってくれない…
いよいよ凪音さんの声も訝しむようになる。
凪音柚葉
凪音柚葉
待って。もっと分かりやすく言ってよ
凪音さんの言葉に、陽花はやっと顔を上げた。
高村陽花
高村陽花
…私小学生の頃からいじめられてて。その私をいじめていたグループの中に、…まどかがいたの
陽花は、呟くように、ぽつりぽつりとそう零した。
高村陽花
高村陽花
…仲良し、だった。ちっちゃい頃から一緒に遊んでて、幼馴染で
僕と凪音さんは、わずかに目を見開いた。
本当に苦しそうに、陽花は言葉を続けた。
高村陽花
高村陽花
…まどかは私を守ろうとしてくれた。
なのに…私は、自己満足の為に、まどかに約束をさせちゃった…。
私を、守らない、って…
約束。
陽花と、まどかという2人の少女が結んだ約束。
それは、あまりにも、哀しく、優しかった。
高村陽花
高村陽花
その約束でまどかは苦しんでるのに。
…私は、まどかを憎くも思ってる…
声が、震えていた。
それは、そうだろう。
憎むに決まっている。それが自分の結ばせた約束のせいだとしても。
雪川葵
雪川葵
それは、違うよ
僕の言葉に、陽花は横に首を振った。
強く、否定していた。
高村陽花
高村陽花
違うの。…嘘を、ついたの。
まどかが傷つかないことが私の願いだ、って。望みなんだ、って。
…嘘だった、のに。
…私は、謝らなきゃいけない。
けど、まどかは私との約束を必死に守ってる…
泣くかと思った。
けれど、陽花は泣かなかった。
顔を泣き顔に歪めて、それでも。
涙だけは、零してはいけないと言うように。
高村陽花
高村陽花
だから、お願い。
まどかを、私まで連れてきて
深々と頭を下げる陽花に、僕と凪音さんは顔を見合わせた。
僕と凪音さんは、しょうがない、というように1つ息をつき、陽花へと視線を戻した。
凪音柚葉
凪音柚葉
…本当は私、目立ちたくないんだけど
陽花がゆっくりと顔を上げた。
恐る恐る、迷子の子供が、差し伸べられた手を掴むように。
はあ、と凪音さんがわざとらしく溜息をつく。
凪音柚葉
凪音柚葉
今回は特別。
ただし、今度ジュース奢ってよ
高村陽花
高村陽花
…いい、の…?
凪音柚葉
凪音柚葉
だからそう言ったじゃん。
何回も言わせないでよね
つんと突き放すように言った凪音さん。
陽花は顔を輝かせ、もう1度頭を下げた。
高村陽花
高村陽花
あり、がとう…!
詰まったような声の陽花に、僕と凪音さんは微笑みを向けた。




さあ。
完結させよう。



2人の少女の、互いを想い合う故に生まれた、哀しく優しい、約束の物語を。