第2話

#1
4,920
2019/07/22 12:47
あなた
あなた
わあっっ
つんっ、と何も無いところでつまづいて、
ごんっ、とコメディーのごとく顔面強打。


瞬間、クラス中に笑いが巻き起こる。
あなた
あなた
(またやってしまった)
「落ち着いた子」デビューはまだまだ遠かったようだ。


入学そうそうため息をつく。
あなた
あなた
(まだ、1回目)
ふっと起き上がるときりっと前を向く。
あなた
あなた
私は桃倉あなたです!
椎橋中学校から来ました!
お菓子作りが好きで、
将来の夢はパティシエールになって
世界中の人を笑顔にすること!
よろしくお願いしま…
耳をつんざく様な周りから聞こえてくる白々しい声。




出た!男子ウケ狙っちゃうヤツ‪w

はいはい、世界中の人ねー。

もう少し現実見ろっつーの。夢見る乙女か。

転んだ時から思ってたけど、ほんとにコレ・・で高校生?

それな!中学校と間違えちゃったんじゃない?‪w





足が震えて、動けなかった。
また何か言われるのが怖くて、反論出来なかった。
あなた
あなた
(…2回目)
やっとの思いで、足を動かした。


笑われながら席につくと、
隣の席である灰羽リエーフが声をかけてきた。
灰羽リエーフ
だ、大丈夫?
気にする事無いって…



うわっ。あの背高いヤツ話しかけてる。

え?マジじゃん‪!一目惚れしちゃった系?‪w

いやー、顔可愛くても中身アレだぞ?

無いわー。てかもう付き合っちゃえよ‪w

キス?キス?‪w
あなた
あなた
(3回目…いやこの人の分とで4回目)
あなた
あなた
ごめんなさいっ!
あなたまで巻き込んでしまって!
それだけ言ってリエーフにお辞儀をすると、
教室から走り去った。
灰羽リエーフ
あっ、ちょっと…





階段下のスペースで膝を抱えて座る。
涙は極力出したくなかったが、
我慢できず声を押し殺して泣いた。
あなた
あなた
(逃げたしたので5回目、廊下で転んだので6回目)
あなた
あなた
(4回までなのに、2回もオーバーしちゃった)
あなた
あなた
(もうだめだ)
唐突に足音がして、
気付いた時には人の影があった。
孤爪研磨
あれ…先客?
あなた
あなた
あっ、ごめんなさい
孤爪研磨
いや、良いけど
孤爪研磨
なんで泣いてんの?
あなた
あなた
えっと…
あなた
あなた
あの…こんな事があって…
自分でも驚く程にすらすらと喋っていた。
孤爪研磨
そう…
それだけ言うと研磨はそっぽを向く。
孤爪研磨
…気にしなくても、いいと思う
あなた
あなた
え?
孤爪研磨
いや、そんな器小さい奴の言葉なんて、
気にしなくていいって…
あなた
あなた
あ、、ありがとうございます
お互い気まずくなって、自分もそっぽを向いた。


でも嬉しかった。
さっきの背の高い子みたいに私を認めてくれた。
黒尾鉄朗
おーい、研磨?
あ、いたいた
背が高い髪が変な人がこっち来た。
あ、この人、けんまっていうんだ。
黒尾鉄朗
えーと、この子誰?
孤爪研磨
あ、えっと…
あなた
あなた
桃倉あなたです。3組です
黒尾鉄朗
え、、あー、1年か
あなた
あなた
え?
黒尾鉄朗
コイツは孤爪研磨。
2年3組な。
黒尾鉄朗
ちなみに俺は黒尾鉄朗。
3年5組
あなた
あなた
せ、先輩!?
あなた
あなた
すいませんっ!先輩って知らなくて…
孤爪研磨
いや、別にいいよ…
黒尾鉄朗
つーか、今授業中だろ?
俺のクラスは自由行動だかで大丈夫だし
コイツはいつも通りだけど…
あなた
あなた
あ…
この人も私の事を理解してくれる。

そう思った。


口を開きかけたその時。











パシャッ。



カメラのシャッターを切る音がした。

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