第12話

#10
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2019/08/02 11:08
研磨side
あなた
あなた
せんぱーい、
おーい研磨先輩起きてくださいって
孤爪研磨
ん…んぁぁ。
あなた
あなた
あー良かったやっと起きた
そう言って困ったように笑うあなた。

きゅっと胸が締め付けられるのを
欠伸で誤魔化した。




少し前から様子がおかしいのが自分でも分かる。

いつからか現れては胸を締め付けるこの気持ちは、
一体何なのか。


気付けば我を失って行動をおこして、
いつの間にかあの子あなたから目が離せなくなって。
傷つけてしまうのがこんなに恐ろしいのに、
どうしても触れたくなる。



あなた
あなた
えっ、、研磨先輩?
気付けばあなたの腕を掴んでいた。

まただ。馬鹿みたい。
俺は自分をあざ笑った。
孤爪研磨
いや、埃ついてた
手を離す。


彼女はきょとんとこちらを見て、
ぱっぱと服を払った。

これでOK、なんて照れて笑って。




どうしてこんな俺に笑いかけるんだろう。

あの時だってそうだ。


本当はキスするつもりだった。
でも急に良心が邪魔して出来なかった。

自分でも分かっていたんだ、
別に菅原って人と何も無いことぐらい。

でも感情が抑えられなくなって溢れて、
もういいやって押し切ってそうした筈なのに。



こんなに情けなく終わるなら、
いっそ良心なんて忘れたかった。


孤爪研磨
じゃあ、戻る?
あなた
あなた
はい!そうしましょう
俺の心などつゆ知らず屈託なく笑って荷物を持つ。


夕日が差して眩しいので俺も席を立った。
絶対次はあなたを射止めてみせるから。




こんな何かの青春物語みたいな感情と衝動は初めて。
でもなんか悪くないかも。












体育館に戻ると丁度片付けが始まった所だった。


クロが俺を見てニヤっと笑ってこっちへ来る。
俺がさっき交代を名乗り出たのをからかうんだろう。

別にいい。
サボりたかっただけって答える。それだけの話。

クロは核心をついた詮索はしないので助かる。
距離感を理解して接してくれてる。



いつかクロにも本当の事を話す日が来るんだろうか。
それでも応援してくれるだろうと思う。
恋敵じゃなければ。

黒尾鉄朗
研磨〜
孤爪研磨
なに。
黒尾鉄朗
何言うか分かるだろ?
孤爪研磨
あれはただサボっただけ。
黒尾鉄朗
ほらやっぱり。
素直じゃないねぇ〜
孤爪研磨
知らない。
それよりも、烏野の人困ってるよ
黒尾鉄朗
はいはい
意味ありげに笑ってクロが去っていく。


俺も片付けをしよう。

今あなたには自分から近づかない方がいいかな。
別にずっとそばにいたいとかじゃないし。




でも、あなたの笑顔を見るとどこか安心する。

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