第16話

#13
2,307
2019/08/17 05:34
脱兎のごとく駆け出すあなた。


振り返って全然進んでいなかったことに気がついた。
何事かと目をみはった影山と目が合う。

無人島で何日も過ごして諦めかけていた時に
救助ヘリが飛んできたような感覚になった。
あなた
あなた
うぇぇぇ無理ぃぃぃぃ
なにしろほとんど進んでいなかったので
数秒もかからない。

迷いなく影山に抱きつく。
あなた
あなた
あぁあぁ怖かったぁぁぁ
影山飛雄
っ!!
影山が真っ赤になって困っているのを、
あなたは気がつかない。

子供のようにわあわあと泣いて喚く。
夜中にこれだけ騒いで誰も様子を見にこないのは
男女2人きりという状況の察しだった。

裏で何度も叱りに行こうとする澤村と、
からかいに行こうとする月島と、
何故か止めに行こうとする研磨と菅原を、
総動員で押さえ込んでいたのを2人は知らない。


少しの間葛藤していた影山だが、
なお泣き続けているのを見て、
そっとあなたの頭をなでた。

あなた
あなた
影..山くん…うぁあぁああ
影山飛雄
(妹みたいだな)
影山飛雄
あなたが妹なら良いのにな
あなた
あなた
…え?
思わず泣き止んできょとんと影山を見つめる。

ようやく影山の顔が赤いことに気がついた。


ふっと冷静になったあなたは自分の状況を把握し、
あなた
あなた
あ"っごめんなさい!!
自分も真っ赤になって離れた。
影山飛雄
い、今の忘れて…
あなた
あなた
え…と言うと
頭が真っ白というか真っ赤というかなので
きちんとした対応が出来ない。
影山飛雄
あの…妹ならいいのに、って
あなた
あなた
あ、ああ…
思い出す。

特に深くは考えず軽いニュアンスで答えてしまった。
あなた
あなた
でも…影山くんお兄ちゃんだったら
楽しそうだなぁ
影山飛雄
っと…
また一段と影山の顔が赤くなる。
あなた
あなた
あー忘れます!忘れますから
影山飛雄
いや
あなた
あなた
影山飛雄
やっぱ…忘れないで
あなた
あなた
えっ?
影山飛雄
いややっぱ忘れて
あなた
あなた
えっ??
影山飛雄
あーやっぱ忘れないで!
あなた
あなた
どっち?笑
影山飛雄
忘れないで…ください
あなた
あなた
あはは、わかりました
呆れたように笑って少し落ち着く。
あなた
あなた
そういえば、妹がいるの?
影山飛雄
いや…いないけど、
あなたみたいな妹いたらなぁって
あなた
あなた
え、えっと、そっか
再び赤くなりうつむく。
あなた
あなた
(そういうのじゃない、そういうのじゃないから落ち着け!)
必死に自分に言い聞かせて落ち着こうとするが、
どうにも意識してしまう。

静かになった。
影山飛雄
ていうか…どうすんの?
あなた
あなた
え?何が?
影山飛雄
いや…女子棟、怖くて戻れないんでしょ
あなた
あなた
あ…
顔が軽く青ざめる。
ぱちんと手を合わせて上目遣いに影山を見る。
あなた
あなた
ここじゃダメですか
影山飛雄
ダメです
そっぽを向いたのは顔が赤くなったのを隠すためだ。
あなた
あなた
なんでですか
影山飛雄
俺らは男であなたが女だからです
あなた
あなた
男女差別だと思います
影山飛雄
それが世の中です
あなた
あなた
まぁなんでもいいからお願いします
影山飛雄
俺が良くても他の人がダメです
あなた
あなた
いってみないと分からないです
影山飛雄
嫌です
あなた
あなた
じゃあ私どうすればいいんですか
影山飛雄
えー…っと
影山飛雄
あ、じゃあ別室は?
あなた
あなた
うーん…まぁ多分それなら
そういうことになった。

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