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第16話

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真が泣いてしまい、私達が慰めている内に4班が全滅したとの情報が入った。

その少し前に森の中心部で爆発音があった事からそれにより4班最後の生き残りが戦闘不能になったのだろう。
武君はきっと強いので心配する必要はなさそうだが、心配なのはか弱い風ちゃんである。
「相棒。この辺りか。爆発音がしたのは」
「えぇ。風ちゃん…巻き込まれていないといいけど。」
突然、不穏な空気に包まれる。

その空気は頭上から送られてくるように思えて、上を見ると、不気味な男が木の枝の上に立っていた。
「この様な大事が起こると…人は様子見に姿を現す。」
不気味な男はそう言い放つと木の枝を降り、地面へ着地した。
「貴方…一体誰。」
「私は劉基りゅうき。貴女方を殺す者です。以後お見知りおきを」
「殺すとは関心しないね。命ほど尊い物はないってお母さんに習わなかったの?劉基さん。」
猪佐男君の発言に高笑いをする劉基。
「残念ですが、母は物心つく前に亡くなりましてね。それに…命ほど尊い物はない…ですか。それは違います。命という物はいつか朽ちる使い捨ての欠陥品。奪わずとも消えてしまうなら…今奪っても同じ事。」
しかし、私は間髪入れずに反論した。
「貴方の言っている事は全て的外れよ。命というものは…人が知る事の出来ない程特別な物よ。貴方なんかが軽々しく奪って良いものではないわ。」
私が発言を終えると、彼は私達とは分かり合えないと理解した。
「…やれやれ。貴女方とは話しが合わない様だ…。まぁ、いい。貴女方を殺して…私の意見が正しいと認めさせれば良いのだから。」
同様に私達も彼とは分かり合えないと理解した。
「やってみな。」
「そうか…なら、8対2の勝負をせいぜい楽しむがいい。」
「ん?8対2?1対2じゃなくて?」
それを聞いて高笑いをする劉基。
「ははは。間抜けな少年達だ。」
劉基は指を鳴らし合図をした。

すると、ずらずらと出てくる見覚えのある人達。

確か、ゲームが始まる前に会った参加者達だ。
「これは…一体。」
現れた参加者達の中には3名程、体がボロボロで生きているとは思えぬ程の重症を負っていた。
「例えゲーム上の仲間であっても、私達に信頼関係はない。なら…私が敵味方全員を操れば…他者に怯えながら行動する事はないし、何より例え死んでも操れる奴隷が手に入る。
……私の能力はそれを可能にするんだよ。」
「まさか…この人達…」
「想像通りさ…我ら1班の人間と2班の輩の死体さ。」
「…気持ち悪い…。確かにそれであんたは裏切られないが…そこに信頼なんてない。孤独なもんだな。」
「好きに言えばいい。この世は…勝った者が正しいのだから。」
そう言い、劉基は操った人々を使い私達に攻撃を仕掛けてきた。

猪佐男君は刀の鞘を抜かずに襲って来る人達を払うと、私に言う。
「相棒!さっきの技使えるか?」
私に背を向けている猪佐男君に、無意識に首を振り答える。
「無理よ。さっきのでしばらくは能力を使えないわ。」
「っ…劉基って奴を動けなくすれば多分こいつらも止まるのに…」
確かに、弾丸の性質を変えるさっきの能力は使えない。

だけど、もう1つ隠しダネがある。

私の武器、二丁拳銃「イザナミ」「イザナギ」の「イザナミ」は弾丸の性質を変える能力がある。

だけど、「イザナギ」は違う。
「…勝負は一瞬」
心の声を口走ると、私はイザナギの能力を使った。
「なっ…消えっ…」
驚き、声を漏らす劉基。

私は彼の後ろにいた。

…これがイザナギの能力、「拳銃の使用者の性質を変える能力」。

私はこの能力で自身の筋肉を強くし、高速で劉基の後ろに動いた。

かと言ってイザナミの能力が使えない今、この拳銃は真っ直ぐにしか進まない。

…手の内を明かした以上、1度で決めるしかない。
私は引き金を引いた。
魔弾の発射音と共に劉基は私に気づいた。
「っ…後ろ…」
「もう遅い」
劉基は突然の出来事に体が一瞬硬直した。

攻撃が当たると同時に土煙が周辺を舞い、私は彼への攻撃が成功したのだと安心する。

「はぁ…やれやれ」
しかし、私の考えは甘かった。

劉基は操っていたボロボロになった参加者を盾にしたのだ。
「やはり…死体は脆いですねぇ…。」
ボロボロだった参加者の体は崩れ落ち、手足が取れ動けなくなっていた。
私は直ぐに猪佐男君の元へ戻った。
「私の攻撃が駄目だった…これは私が操られてる人達を止める方にまわった方がいいかな?」
私がそう言うと、猪佐男君は突然、私に斬りかかってきた。
「…え?」
紙一重で躱すが、私には何が起こったのか頭が追いつかない。

すると、劉基は話し始めた。
「私の能力は“人を操る”と言う単純なものでね。この力の前には、絆って物は無意味なんだよ。」
「…猪佐男君の言う通り、本当に孤独ね。」
「ははは。なんとでも言えばいい。貴女は私に殺されるのだから。安心してください。貴女を操る気はありません。ただ、貴女のお仲間であるこの少年に、貴女を殺させますけどね」
…一か八か。間に合って!

心でそう浮かべながら、私は操られた参加者達を抑えた。

「いつまで続くものか」と、劉基は楽しそうに眺めていた。

すると、突然。
「どけや!ザコ!」
「oh…」
この声は武君である。

彼の手に握られた手榴弾が一瞬見えて、私は白目を向き、声を漏らした。

武君は、私から見て1番奥で向き合っている劉基の背後から来ている。
「なんだ…あいつ…」
劉基も流石に動揺している様だ。

操っている手が止まっている。
私はとりあえず、動きの止まった猪佐男君を引っ張って連れ出すと、武君に言った。
「武君!君から1番近い所にいる人を止めて!こいつが止まれば…」
「“武様”な!止まれば俺様にメリットがあんのかよ?あ"?」
「え?えー…と、とにかくスカッと敵を倒せるよ!」
「そりゃあメリットがあんなぁ!」
よく分からないが納得してくれたなら有難い。
武君は手に持った手榴弾をこっちに投げてきた。
「え、ちょ、本気!?」
思わず声をだしながら、私は手榴弾が当たらない程度の範囲まで、動かない猪佐男君を連れて走った。
「ぐぁあああああああああ」
悲鳴が聞こえ、今度こそ勝ったと安堵する。

…周りの参加者が無事である訳もないが…これは仕方ないのだと私に言い聞かせた。

こんなところで逃げてしまう自分を恥じる。

「逃げてしまうのは人間の最大の弱点」だとおばあちゃんが言っていたのを思い出して拳を強く握る。

「この場で死んでしまった人がいるなら、その分私が生き延びねば」と思い、私はこの場を去ろうとした。
「どこへ行く気だ?」
劉基の声が聞こえ、振り向く。

すると、恐ろしい形相でこちらを睨む劉基の姿があった。

どうやら操った参加者の体で自分を囲い、ダメージを和らげた様だ。
「なんだよ…おっさん生きてるのかよ…!」
武君が悔しげに言った。

劉基は武君を睨みつけると、「お前は後だ」と言わんばかりに私の方に視線を戻した。

彼は私にどんどん近づいてきた。

彼の手には槍の様な刃物があり、彼は間合いに入ると、私を斬ろうとして来たので、私は魔弾を打って逃げる時間を稼ごうとするが、避けられた。

槍は紙一重で躱したが、猪佐男君を連れて劉基から逃げ切るのは不可能であろう。

武君は劉基の操る参加者に足止めされており、彼からの応援は見込めないだろう。
成功するだろうか…。
今私に出来る最後の賭けが。
《パーン》
乾いた音が聞こえ、私は策の成功を確認する。

乾いた音の正体は銃声。

真君の打った弾丸は見事劉基の急所近くに当たる。
「ふぅ…」
遠目で見て、真君が安堵しているのがわかる。
「っ…クソっ…貴女…一体…何を…」
劉基は苦しみながら私に聞く。
「何も。私の仲間に貴方が打たれただけでしょう。」
劉基は口角を上げた。
「嘘だな。私が…打たれた時…貴女は何も…反応しな…かった……私が…打たれるの…わかって…いたのでしょう。」
私は冷静さを保ちながら、答える。
「そうね。確かに、私は反応しなかったわ。だって…私の賭けが成功した。ただそれだけが目の前で繰り広げられていただけだもの。」
「賭けたぁ……一体…な…ん…だ?」
「仲間と敵…どっちがこっちに来るか来ないかの賭けよ。私は、拳銃、イザナギの能力で自分がこのステージで1番目立つ存在になる様に性質を変えたのよ。こうして仲間に居場所を気づかせた。私に攻撃をする為に私に意識を向けていた貴方は変化に気づかなかったでしょうけどね。ただ、これの弱点は敵も来てしまう事。だから、これは賭けよ。私の考えた一か八かの…ね。」
「はは…1本…取られたな。」
彼から、生命の音が消えた様な気がした。

猪佐男君は目覚め、私へ攻撃した事と足でまといになってしまった事を謝罪していた。

他の操られていた参加者は動きを止め、死体となって地面に倒れた。


…劉基の死に顔はとても穏やかだった。

最後の言葉…私への恨みの言葉は一切なかった。

もしかしたら、彼は…私と概念が違っただけで、悪い人ではなかったのかもしれない。
《報告。1班全滅。残り2班。》
一波超え、沈黙が現れると、ステージに響いた無機質な声。