第64話

⚔️約束を守るために。
752
2022/03/22 13:10
俺には、2つ上の兄がいた。
兄は頭が良くて、人柄もよく。
誰からも期待される人だった。
反対に俺は、剣術しか誇れるものがなかった。
その剣術さえも、兄には及ばなかった。
俺の記憶に残ってる中では、
兄が優しかったことなんて無い。
兄と比較し俺を罵倒する親に便乗し、
俺をいつも馬鹿にした。
その感情はいつか兄弟ではなく、
主従関係へと変わっていった。
智也
智也
お前は本当に無能だな。
直弘
直弘
ごめんなさい。兄上。
智也
智也
俺の弟がこんな馬鹿だなんて知られたら、
恥ずかしくて仕方がない。
直弘
直弘
ごめんなさい。
智也
智也
少しは俺の人生の役に立てよ。
こんな会話は日常茶飯事だった。
そんな俺の心の癒しは、
友達である大久保肇との時間だった。
肇
直は何も劣ってないよ。
直弘
直弘
そうかな。
肇
俺は直が弟だったら凄く嬉しい。
直弘
直弘
でも、俺は何も出来ないから。
肇
直には剣があるじゃん。
俺を助けてくれたその力が。
肇との出会いは、路地裏だった。
兄の頼まれ事をこなす最中に、
子供達の罵声が聞こえて視線をやった。
そこでは数人の子供たちが、
1人の男の子を取り囲んでいた。
そこで助けたのが、大久保肇だった。
肇は藩主の息子だったけど、
体が弱くて、心優しくて。
肇
俺に次期藩主は向いてないから、
弟に譲るつもりなんだ。
なんて言っていた。
兄に虐げられる日々は嫌だったけど、
肇が居れば俺は幸せだった。
そんな日々がガラリと変わったあの日。
兄は俺に命令をした。
智也
智也
今夜大久保邸に侵入し、
家のものを皆殺しにする。
お前も着いてこい、直。
一瞬、俺は兄の言っている言葉が理解できなかった。
この人は何を言っているんだ。
直弘
直弘
なぜ、藩主を襲うのですか?
智也
智也
俺は、この国を変える。
幕府が上にいては邪魔だ。
直弘
直弘
大久保と幕府は関係ないと思います。
智也
智也
幕臣が1人いなくなるだけでも、
幕府にとっては大事だ。
俺の名を攘夷志士として、
広めるための1歩にすぎない。
兄のクソみたいな野望のために、
肇やその家族が死ぬなんて許せなかった。
俺はすぐに家を出て肇の屋敷へ向かった。
肇の屋敷について、目の前に広がる光景を見て、
俺は膝の力が抜けた。
肇の屋敷は既に火の海と化していた。
智也
智也
ハハハハハッ。
お前はどこまでも馬鹿だな。
直弘
直弘
どういう事ですか?
今日の夜だと。
智也
智也
お前とここの息子が友人なのを
知っていて、前もって報告する
やつがどこにいる?
俺は、お前のその顔が見たかったんだ。
この時、俺の兄に対する恐怖心は、
怒りへと変わった。恐怖という文字は、
俺の頭から消えた。
俺は兄を無視して、肇の屋敷へ飛び込んだ。
直弘
直弘
肇。何処だ?
肇
直?
直弘
直弘
肇。
俺が見つけた肇は、体から血を流して、
今にも意識が途切れそうだった。
肇
直...俺の事はいいから、
ここにいたらお前も危険だろ。
俺は、もう手遅れだから。
そう肇が言いたいのが伝わってきた。
俺から見ても、助かると思える状況ではなかった。
肇
最後に、お願いをしてもいい?
直弘
直弘
何?
肇
佐竹智也の野望は、
お前が阻止するんだ。直。
そしたら、お前が持ってる
劣等感は綺麗サッパリ消える。
直弘
直弘
約束。絶対俺があいつを捕まえるから。
俺は、この時新選組に入ることを決意した。
そして、肇を見送った後、俺は家を出て。
江戸へと向かった。
これが俺の、過去の話。




.
----------
いつものお詫びに、

2話連続で投稿しました。

プリ小説オーディオドラマ