稲汰の初恋指南塾を終え、しばらく時間を浪費し、10:30になった。その間、神奈はずっと、伝説について考えていた。そして、3つのことが浮かんだ。
・パートナー → 恋人
・太陽の花の中 → ひまわり畑の中
・光輝く神 → アマテラス様
勿論この3つは神奈の憶測だが、これを神奈は本気で信じこんだ。
(神奈)つまりこの伝説は、『恋人が欲しい人が、ひまわり畑の中に行って、呪文の言葉を唱えて祈れば、アマテラス様に会える』……ってこと?じゃあ、アマテラス様を彼氏にできるチャンス!?
次の瞬間、神奈は稲汰の部屋に全速力で向かった。
バンッ!!!
ノックもしないで、稲汰の部屋のドアを開け放つ。
当たり前だが、稲汰は状況がのみ込めないらしく、驚いた表情を浮かべている。
それにも構う様子を見せず、神奈は勢いに任せて話しだす。
太陽の花の中……つまりひまわり畑は、この町には、昔稲汰と神奈がよく遊んでいた所1つしかないため、まずそこで間違いないだろう。1人でその場所をやみくもに探すより、稲汰と一緒の方が、効率がいいと考えたのだ。
(神奈)頭の回転が遅い私にしては、ナイスアイディアじゃない!?
今まで稲汰が神奈の頼みを断ったことはないので、神奈は安心しきった表情で、稲汰の返事を待っていた。
……が。
衝撃の答えを返された神奈は、『ピシッ』という効果音がなるのではないかと思わせるほど、表情が固まった。
神奈はその日のうちに、伝説を探す上での、大きな1つの希望を失ってしまったのであった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。