第59話

6日目-4
52
2021/05/04 06:18
それからの日々は、風のように流れすぎていって。

すごく楽しいけど、すごく寂しかった。

笑いあう度に、もうすぐなんだ、もうすぐなんだ、と、“別れ”が脳裏を通りすぎる。

そんな、拓と別れる2日前。神奈は、その日も拓と一緒にひまわり畑にいた。

拓は、2日後に消えてしまうとは思えない程いつも通りで。まるで、こんなに寂しい神奈自身が否定されているようでもあって。

──けど、やっぱり口にしたら現実になってしまいそうで。
神奈
神奈
ねえ、拓。……楽しいねっ!
こう言うと、拓は決まってこう返してくる。
拓
あ?あー。楽しいなっ!
『楽しいなっ!』という時、拓は幸せそうに笑うから。神奈はその顔がたまらなく好きで、何度もこのやり取りを繰り返した。

そして、1日前。拓と別れる、前日。神奈は拓に告白することを決意した。

明日を逃せば、きっと拓に会うことはもちろん、気持ちを伝える事すら、一生できなくなるだろう。
(神奈)せっかく気づけた初恋なんだから。伝えずに、終わりたくない……!
拓に会ってからまだ1ヶ月も経っていないけれど、神奈の心の中にはいつも拓がいて。どうしようもなく大切な存在だから。
(神奈)……私の“伝説”についての予想、ある意味当たってたかもな。まあ、両想いじゃない事は、最初からわかってるんだけどね……
拓から貰ったひまわりの花冠が、今も枯れずに光っている。拓が消えてしまったら、このひまわりも枯れてしまうのだろうか……?

ふと頭をよぎったが、考えたくもなくて、静かに目を閉じる。

夢のなかでは、神奈と拓が幸せそうに笑っている。その周りには、稲汰や沙那もいて、とても幸せで……

翌日の朝、神奈は、ゆっくりと瞳を開いた。

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