それからの日々は、風のように流れすぎていって。
すごく楽しいけど、すごく寂しかった。
笑いあう度に、もうすぐなんだ、もうすぐなんだ、と、“別れ”が脳裏を通りすぎる。
そんな、拓と別れる2日前。神奈は、その日も拓と一緒にひまわり畑にいた。
拓は、2日後に消えてしまうとは思えない程いつも通りで。まるで、こんなに寂しい神奈自身が否定されているようでもあって。
──けど、やっぱり口にしたら現実になってしまいそうで。
こう言うと、拓は決まってこう返してくる。
『楽しいなっ!』という時、拓は幸せそうに笑うから。神奈はその顔がたまらなく好きで、何度もこのやり取りを繰り返した。
そして、1日前。拓と別れる、前日。神奈は拓に告白することを決意した。
明日を逃せば、きっと拓に会うことはもちろん、気持ちを伝える事すら、一生できなくなるだろう。
(神奈)せっかく気づけた初恋なんだから。伝えずに、終わりたくない……!
拓に会ってからまだ1ヶ月も経っていないけれど、神奈の心の中にはいつも拓がいて。どうしようもなく大切な存在だから。
(神奈)……私の“伝説”についての予想、ある意味当たってたかもな。まあ、両想いじゃない事は、最初からわかってるんだけどね……
拓から貰ったひまわりの花冠が、今も枯れずに光っている。拓が消えてしまったら、このひまわりも枯れてしまうのだろうか……?
ふと頭をよぎったが、考えたくもなくて、静かに目を閉じる。
夢のなかでは、神奈と拓が幸せそうに笑っている。その周りには、稲汰や沙那もいて、とても幸せで……
翌日の朝、神奈は、ゆっくりと瞳を開いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。