ガチャッ
神奈は、気だるそうに家の中に入った。すると、稲汰が2階からかけ降りてきた。
そういう稲汰の声は、少し怒っているかのように尖っている。
神奈が上目遣いでこう言うと、稲汰は一瞬声を詰まらせ、ため息をつくと、笑顔で返した。
神奈は無邪気な笑顔で頷くと、連れられるままに稲汰の部屋に向かった。
~・~
部屋の中に座ると、稲汰は少し真面目な顔で聞いてきた。
神奈は、稲汰に拓と会おうとしていたことがバレたのかと思い、少しヒヤッとした。だが、そんな心配は杞憂だったようだ。
そう言って差し出された稲汰の手には、ひまわりのヘアピンが握られていた。
神奈も、思わず感嘆の声を漏らす。
稲汰は、そのヘアピンを神奈の髪につけてあげながら、話した。
稲汰の優しい笑顔に目を奪われ、頬を少し染めながら、神奈は一言、紡いだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!