(神奈)さすがに、もういるよね……?
お昼ご飯を食べ終えた神奈は、ひまわり畑への道をゆっくりと歩いていた。
午前中会えなかったこともあり、さすがに走ってひまわり畑に行くことはやめたが、神奈の気持ちはそれ以上に弾んでいた。
(神奈)もしもまたいなかったらどうしよう……?でも、昨日約束したし、絶対いつかは来るはず……って、あれ?なんで私、拓と会うのをこんなに楽しみにしているの?
神奈は、そこまで考えると、足を止めた。そして、みるみるうちに頬を赤く染めた。
(神奈)別に、好きとかそういうんじゃないしっ!?昨日あいつに『来てくれ』って言われたから今も向かっているだけで……
息を吐き出し、神奈は再び歩き出す。
(神奈)そういえば忘れてたけど、拓がいったい何者なのかもはっきりさせなきゃ……。どういう風に話を切り出したらいいんだろう?
その方法を考えながら歩いているうちに、ひまわり畑が見えてきた。もちろん、答えは出ていないままだった。
ひまわり畑の奥に目をこらすと、そこにはひまわりの横に座っている拓がいた。
神奈は、とっさに拓の名前を呼ぼうとする。
が、その声はさらに大きい拓の声にかきけされた。
神奈は拓のそばに寄ると、唇を軽く尖らせた。
拓は、神奈の話を聞きながら立ち上がる。
神奈は、恥ずかしさで顔を真っ赤に……はせず、拓の言葉に引いて顔を真っ青にした。
神奈の言葉に、拓は瞳を潤ませた。
神奈がそう問いかけると、拓は神奈以上に不思議そうな顔をした。
神奈は呆れて、開いた口がふさがらなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。