第10話

#9
1,905
2020/04/23 06:23
不死川実弥
………これで…これで、良いんだ…
不死川実弥
……自分の想いも伝えた……
不死川実弥
泣くなって……伝えた…
不死川実弥
…これで、良かったんだ……











︎︎
不死川実弥
……なァ、あなたッ………
哀しみの涙が。

頬を濡らして、地に落ちる。




死んでいる筈なのに、苦しい。

そんなもの……もう、感じない筈なのに。



痛い。

どうしようもなく、胸が痛いんだよ。


あいつの笑顔が頭ん中に浮かぶ。





︎︎
──…師範!((ニコッ





︎︎
不死川実弥
っ……ぅ…ポロポロ
不死川実弥
止まれっ……止まれ、泣くなよ………っ
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
あなた
っ!!! 師範!!!!
あなた
……っあ、…
目が覚めると、そこは見慣れた部屋。

……師範の居ない、不死川邸。
…実弥さんの居ない………不死川邸…。
︎︎




…いつの間にか、泣いていた。
頬を濡らしながら涙は落ち…布団に染み込む。

……雨音がうるさい。
今日は、雨が降っていた。








…まるで……2人の、涙のようだった。
あなた
…なん、で……。
……何で。最後の、最後に。

あんなことを…言い残すのだろう。
「──…愛してる。」
そんなこと言われたって、余計に悲しくなるだけじゃんか。

何で、なんで…師範に伝えられなかったんだろう。
……生きてさえいれば、どうとでもなる。

生きてさえっ………いれば…………。
あなた
っ…何で、何でよッッ……なんでっ…ポロポロ
不死川実弥
「泣くなよ。」
あなた
っ……!! 
師範の言葉が、頭に響いた。

途端に、雨音が聞こえなくなる。
……きっと…師範のことは、これからもずっと忘れられないだろう。

それでも…いいんだ。
……師範に、もう泣くなって…言われた、から。
ただ、少しだけ…前を向いてみようと、思っただけ。
今までの悲しみも、苦しみも、全部…背負って。

そう思うと……少しだけ。
………少しだけ。
楽になったような、気がした。



強い酸味。……衝撃的な、出来事の後に。

苦い匂いが…苦く、苦しい思い出が、胸に残って離れない。



…それは、まるで。










──…檸檬lemonのようだった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
少女
___さん!!
青年
っ…!! ___!!
少女
ず、ずっと…会いたかったぁっ…!!
青年
俺だって…ずっとッッ……!!
天地に咲いた、花々に囲まれて。

抱きしめ合う、1人の青年と…1人の少女は。







涙を流しながら……笑いあっていた。















___fin.

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