第7話

#6
1,829
2020/04/19 12:23
歩いて、歩いて……歩き続けても。

見えるのは、ただただ真っ白な空間。




右も左も……前も後ろも、分からなくなってくる。








ここは………何処?











そうやって…私が白い世界を、さまよっていた時だった。
???
…………あなた。
あなた
……え?
その声を聞いただけで……誰なのか。

一瞬で理解した。
ずっと、ずっと……会いたかった人。

話したかった人。



思い出の中の、貴方じゃない。









今、目の前にいる貴方に。
あなた
し…はん………?
不死川実弥
あァ。……元気だったかァ?((ニコッ
あなた
えっ……ぁ…ほ、ほんとに………? ほん、もの…………?
不死川実弥
あたりめぇだろォ。
そう言って……笑い掛けてくる師範。






……本物だ。

思い出の中の、師範じゃない。




今、こうして……“私”に微笑んでくれている。








涙が……嬉し涙が、止まらない。

止まることを、知らなかった。
あなた
うっ…ぁ……ごめ、んなさいっ………ごめんなさい……!! 私の所為で……私が、弱い所為でっ…!!!
……師範に、抱き着く。
不死川実弥
……なぁに言ってんだ、お前は…何も悪くねぇ。……だから…もう、泣くなァ。
不死川実弥
俺まで……泣いちまうだろうが…。
……私の頭を、優しく撫でながら。

掠れた声で……師範は、そう零した。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
目の前に、あなたが居る。
本当、神ってやつは……こういう時だけ…。
こんな事するくらいなら……もっと早く、俺達を……救って、欲しかった。





涙が溢れる。

溢れて溢れて、とめどなく溢れ続けて。
不死川実弥
………あなた。
……やっとの事で……俺は、あなたに話し掛ける。
あなた
なん、です…か……。
掠れた……泣き声。

天国ここから、何度も何度も……あなたの泣き顔は見てきた。




見る度に……胸が、締め付けられた。
悔しかった。









コイツを独り置いて……死んでしまったことが、悔しい。
……だから。
不死川実弥
俺のことは……もう、忘れろ。
あなた
………え?
不死川実弥
俺の事は忘れて……鬼の居ぬ世界で、嫁いで、幸せになれ。……俺の…心からの、願いだ。
あなた
っ……
あなた
……そ、そんなの……無理に決まってっ……るじゃないです、かっ………
途切れ途切れになりながらも、必死に言葉を紡ぐあなた。
あなた
だって、私は…………。


















︎︎
あなた
実弥さんのことが、好きなんですよっ…
︎︎











不死川実弥
………
︎︎
……‪嗚呼。

この世は、なんて理不尽なのだろう。









…せめて、生きてる時に……言って欲しかった。
今からじゃ…もう、何もかもが。

















──手遅れなのだから。



















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