歩いて、歩いて……歩き続けても。
見えるのは、ただただ真っ白な空間。
右も左も……前も後ろも、分からなくなってくる。
ここは………何処?
そうやって…私が白い世界を、さまよっていた時だった。
その声を聞いただけで……誰なのか。
一瞬で理解した。
ずっと、ずっと……会いたかった人。
話したかった人。
思い出の中の、貴方じゃない。
今、目の前にいる貴方に。
そう言って……笑い掛けてくる師範。
……本物だ。
思い出の中の、師範じゃない。
今、こうして……“私”に微笑んでくれている。
涙が……嬉し涙が、止まらない。
止まることを、知らなかった。
……師範に、抱き着く。
……私の頭を、優しく撫でながら。
掠れた声で……師範は、そう零した。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
目の前に、あなたが居る。
本当、神ってやつは……こういう時だけ…。
こんな事するくらいなら……もっと早く、俺達を……救って、欲しかった。
涙が溢れる。
溢れて溢れて、とめどなく溢れ続けて。
……やっとの事で……俺は、あなたに話し掛ける。
掠れた……泣き声。
天国から、何度も何度も……あなたの泣き顔は見てきた。
見る度に……胸が、締め付けられた。
悔しかった。
コイツを独り置いて……死んでしまったことが、悔しい。
……だから。
途切れ途切れになりながらも、必死に言葉を紡ぐあなた。
︎︎
︎︎
︎︎
……嗚呼。
この世は、なんて理不尽なのだろう。
…せめて、生きてる時に……言って欲しかった。
今からじゃ…もう、何もかもが。
──手遅れなのだから。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。