June 3rd
あの事件から四日経った。今は有給を取ったツジとニューヨークの街を歩いてる。
「で、どうだ。あのメイドさんは」
「死刑などにはなりませんでしたが、そう短くない時間、服役する事になりました」
「そうか、そりゃ良かった」
いきなり投げかけられた言葉に振り返ると、サッカー小僧とナマイキ女優が居た。私服のようで、どちらも顔を軽く隠している。
「どうした。休みでも取ったのか」
「ははっ、もうすぐ現役復活できるが、その前に聞きたかったんだ。自殺じゃない理由」
この小僧が聞きに来るとは思って居なかったが、聞きたいなら聞きに来いと言ったのは俺らだ。女優の方は聞きたくなさそうだったんで、一人で待っててもらった。
細い横道に入り話す。
「死因は転落死じゃなく絞殺。しかも縄は被害者の足元に丸く、囲むように落ちてた。つまり縄を絞めたのは他人。分かってくれたか?」
「はい。でも…彼女は人を殺すようには見えませんでした。本当にそうだったんでしょうか」
「それは間違いありません。縄から、彼女の指紋が出ました。あの人は最初から罪を償うつもりだったんです。面会した時も、悔やんでる風には見えませんでした」
「そっか。勇気のある人だったんだな」
若干の沈黙のあと、ベガティルが口をもう一度開く。
「そういえば、社長は何故貴方達を招待したのでしょう」
「あぁ、それは…多分、招待したのは社長の方じゃなくて、あの使用人だよ」
俺は懐から一通の手紙を取り出す。それをベガティルに渡し、読み始めた。
「彼女は手紙と招待状を同封して、私達に送って来ました」
「『パーティ中、必ず人が死ぬ。お前には真実を暴いてもらう』……ね…彼女は、最初っから覚悟が決まってたってことか」
「はい。彼の悪行を暴かせてから、捕まるように仕向けてたので……」
しんみりとしてると、耐え切れなくなったのか、アルタイルが声をあげる。
「ねぇ!つまんないわ。もうその話はやめましょう?折角の休みなんだし。貴女!サクラだっけ?服装が硬すぎだわ。私がコーディネートしてあげる。さぁ、行きましょう!ベガ。マサヤも!」
アルタイルは走り出す。サクラの手首をしっかり掴んでる。
「おい!そこ女性用じゃねぇだろうな?」
俺はベガティルと目を見合わせ、一緒に走り出した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。