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第3話

【One・Invitation〔2〕】
 19:10
アルタイルは廊下を歩いている。黒いフィッシュテールのドレスに黒髪を紺のリボンに赤い薔薇の刺繍が入ったバレッタで少しあげている。その姿はとても似合っている。ただ不釣り合いなのは、白地に青い蝶が描かれたアイマスクタイプのベネツィアンマスクだ。
「なんでこんなモノを…!」
やはり嫌なんだろう。ミステリアスで似合うと思うが。
すれ違う客も全員マスクを着けている。
「喫煙所はあるんでしょう?どこ?」
「そちらを右に」
アルタイルは喫煙所に着くなり、すぐ煙草を取り出し、吸い始めた。先に居た人などお構い無しに。
「はぁ、やっぱ落ち着くわ」
「お?女優さんはタバコの匂いにも気を付けるのか?甘い匂いだな」
先客が口を開く。紺のダークスーツに青いネクタイ、遊んでいたであろう前髪をワックスで強引に固めたであろうかのようであるが、それが似合っている。しかし──やはりと言うのだろうか──黒をベースに植物の柄の描かれたアイマスクを着けている。
「何?いきなり馴れ馴れしく話しかけて。貴方が社長?」
「いやいや、そんなフキゲンになるなよ。初対面でもないんだしさ?」
彼のマスクは布製らしい。煙草をくわえ、クイッと片方を引っ張りあげる。そこには、雰囲気にあった元気な青年の顔が垣間見えた。
「申し訳ございませんが、お顔を出すのは控えて下さいますよう、お願い致します」
「おっと、悪いね。だが、思い出してくれたか?アルタイル」
「…そんなん着けてたら判るわけないでしょ、ベガティル」
ベガティル・シーガンス。プロのサッカー選手だ。アルタイルとは幼馴染だと言う。
「ははっ、確かにそうだ。アルはすぐわかったがな」
「オーラでも出てたかしら?ベガはそんなのまったくなかったけど」
「キツいこと言うぜ」
マスクを戻しながら話している。
「でも、顔を表さないよかいいと思うわ。どこかの誰かさんと違って」
「…『unknown』社長にしてパーティの主催者、ね。『unknown』ってどう言う会社だっけか?」
「そこから?ったく、なんで分からないのかしら」
「ははは、悪いな」
苦笑いをしたあと、哀しい笑みを浮かべ、
「…まだ、仕事も忙しい時だったから」
「そう…だったわね。ごめん、辛いこと思い出させて」
「いいんだ、もう過ぎた話だし。それに、傷ももう治りそうだから」
煙草を持った手を左右に振った。
彼はサッカーチームのエースストライカー。代表選手にも選ばれた彼は、サッカーの才能とその美貌で特に女性からの人気があった。そのせいか轢き逃げにあい、脚を怪我し、現在治療に励んでいる。
「『unknown』は、最近売れだしたファッションブランドよ。多分この服もそう。暗い色のものが中心で、クールに魅せるには丁度いいって評判。店員が顔を見せないってのも特徴らしいわ」
「らしいって、行ったことねーのか?」
「行かないわよ。私だって忙しいんだもの」
「そうだったな」
「…うん。話を戻すけど、一番特徴的なのがこの会社の社長なの」
「ん?社長がどうしたんだ?」
アルタイルはちょっと呆れ顔になり話す。
「分からないのよ。顔も、素性も」
「なんもわかんねぇの?」
「そう。なんも分からないの。何かあるときも文章だけ」
「そりゃ面白いな。そんなヤツがなんでこんなパーティ開いたんだ?」
「分からないわよ。どうせコネ増やしてやりやすいようにするんでしょ」
「ははっ、的をえてるかもな」
その後、しばらく黙ったあと、
「会場行ってみるか」
「パーティは20:00でしょう?」
「来てる客もいるだろ。じゃ、先いくぜ」
「ちょ、一人にしないで!私も行くわ!」
アルタイルはベガティルを追って喫煙所室を出て行く。

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望仁香
望仁香
お手柔らかにお願いしますm(_ _)m 誤字・脱字多々あると思われ…… 書くジャンルはバラバラになるかもしれないです。
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