第4話

【Two・Preparation〔1〕】
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2019/07/13 04:12
19:30
会場にはあまり客はいない。それもそうだ。まだ時間に余裕がある。
「やっぱいないじゃない」
「そうか?いや、居るぜ。ほらそこ」
ベガティルの指した所には深緑色のフィット&フレアのドレスを着たショートヘアの女性と、ブラックスーツを着た荒くカットされた髪の男性。夫婦と言うより親子みたいだ。その二人にベガティル達は近づいた。
「Hello.随分とお早いですね」
「そっちこそ。まさか俺達と同じくらい早く来るヤツがいるとは思わなかった」
やはりマスクを着けている。スーツよりも明るい緑に白い蜘蛛の巣の模様だった。女性は、黒に可愛らしいピンクの花が散らされている。だがこちらを向いてはいない。何に夢中なのだろうか。
「あなた方は何故早くに?」
「あー、自己紹介した方がいいかね。俺はマサヤ・アンドウ。一応探偵をしててね。早くに来たのは職業病ってのと、日本人の性ってヤツかね」
「…!なんで探偵なんかが居るの?!何を探るって言うの!」
「アル、落ち着け!お前は何も悪くない」
ベガティルはアルタイルを落ち着かせた。激しい口論でようやく女性は気付いたようだ。肩をあげてビックリしている。
「どうしました?!え、えと。何があったんですか?」
「あんたも探偵?!私は何も──」
「すいません!!私達場違いですよね?何故招待されたかも分からないのですが、気分を害されたと思います。ですがどうか勘弁して頂けると有難いのですが。何かあった時以外、個人の詮索などは一切しませんので!」
「え、いや…そんなに怒ってないわよ。こっちも悪かったわ」
食い気味に謝罪が行われアルタイルもたじろいでいる。
「…私、サクラ・ツジっていいます。えと、アルタイル・エルベさん、ベガティル・シーガンスさんで合ってますか?」
「え、ええそうよ。よくわかったわね」
「職業柄ですかね」
そんな話をしていると、客がどんどん入って来た。

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