「待って!」
今度は俺が言われる番だった。
まさか、壮五とここねがそんな仲だったなんて。
「は...はぁっ、けっこ、走ったな...?」
なんてつぶやく。
スマホを構えて、"大和さん"をタッチする。
とりあえず、現状説明しなくちゃだ。
「もしもし、大和さん?」
『おー、ミツ?どした?』
「公園で会えねえ?」
『会えるけど』
俺は簡単に一言だけ伝えた。
_ここね、壮五にキスされてた
「はええな、大和さん」
「ちょ、なに呑気に言ってんだばか」
「ははは」
説明した。
大和さんが結婚の話をしたこと、俺がついそっけなく返事をしたこと、
泣きながら出てったこと、壮五に額だけどキスされてたこと。
大和さん、驚き過ぎ。
「...はあ?!」
「うっせーな」
「うそだろ!?あいつ...はあ!?」
頭に軽くチョップを落とす。
落ち着いたみたいだ。
「お前がそっけない返事したからしょげてただけだろー」
「キスすんのか、普通」
「あいつら、結構仲いいからな」
そんなん、知らなかった。
意外と俺に言ってなかったこともあったんだな。
「とりあえず、ソウに聞くしかないだろ」
「待ってって言ってたの無視してきた」
「そりゃお互い様」
大和さんがスマホで壮五を呼び出す。
俺は、そのうちにそろりと抜け出す。
_向かったのは、とある書店。
「あの、__に関しての雑誌って」
「こちらです」
もし壮五とここねがそんな関係だったら、もうチャンスってないだろ。
これはここね信じてるからの行動。
「わ、大量...!」
「どんな形式にしますか?」
「いや...ただ、伝えたいだけなんですけど」
「では、こちらの雑誌などいかがでしょう?」
差し出された雑誌。
パラパラとめくると、_____に関しての情報ばっか。
適当に店員さんに挨拶すると、俺はレジに向かってこの本を買った。
「1080円になります」
「ちょうどで」
「ちょうどお預かり致します。レシートです。ありがとうございました」
機械的な台詞に苦笑しながら、俺は大和さんに見つからないように、そっと寮へと戻った。
ニュースをつけてさっそく買った雑誌を眺める。
「...これだな」
*
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。