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大和さんから呼び出されて、やってきたのは近くのカフェ。
なにやら最近疲れがたまってきているらしい。
「ソウとかが頑張ってくれてんだけどさ、タマがなかなか言うことを聞かないわけでさー?」
「確かに環くんて、自由だよね」
「そうなの」
と、ちょうど店員さんが紅茶を持ってきてくれた。
大和さんは「どうも」と小さく言い、さっそくカップに口をつけた。
私も「ありがとうございます」と言って、渡された珈琲に角砂糖を入れて口をつける。
...ほろ苦い。
「...珈琲頼むとことか、なんか大人びてるよな」
「そう?」
「なんか、ミツと同じ」
「...そう?」
少しにやけてしまう。
だって、大好きな彼と同じなんて言われたら、誰だって嬉しいはず。
私だって例外じゃない。
「そういえば、ミツで思い出した!」
「んくっ...なにを?」
「結婚とか考えてねえの?お前ら」
「んっ!!」
突然のことに、思わず喉が詰まってしまった。
そんな私に、大和さんは背中をさすってくれる。
「けっ、結婚!?」
「うん、そう」
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!