帝とデートだぁ!…と浮かれていたのはさっきまでの事。キョロキョロと辺りを見回してみると全く知らない路地裏に来てしまった様だ。
声をかけられて見てみると目の前にいたのはニヤニヤしながら喋る30代のおっさんだった。…ロリコンなのかな?
僕が面倒臭いなと思っていると後ろから20代後半ぐらいのおばさんが「お嬢ちゃん?この子男じゃないの〜?」と言った。
……………僕はどちらでもないのに。
それだけ言って立ち去ろうとしたら急に肩を掴まれて「はぁ!?」と怒鳴られた。
僕何か悪い事言ったかな?…面倒臭い。少し殴られたら見逃してくれるかなと考えていたら急におっさんが呻き声を上げた。
そう言いながらにっこりと黒い笑顔でおっさんの腕を締めあげる黒い帽子の少女─────海瀬 夏希は「このまま折っちゃっていい?」とおっさんに言うと更にキツく腕を締め上げた。
「許して!」と謝罪を繰り返すおっさんを他所におばさんは逃げて行ってしまった。
夏希は暫く腕を締め上げてパッと腕を離すと「ばーーーか!一昨日来やがれ!!」と逃げて行くおっさんに向かって中指を立てた。
「ありがとう夏希」とお礼を言おうとしたらいきなり抱きつかれてしまった……てか痛い痛い力の加減ぐらいしなよ折れるよ???
そう言って奥から現れたのは夏希と付き合っている白髪の少年…白瀬冬馬。
冬馬が言い終わる前に息を切らして来たのは帝だった。その額には汗が浮かんでいて沢山走り回ったのが見て分かった。
…悪い事をしてしまったなぁ…。帝は病気なのに。倒れたらどうしよう…。
僕が謝罪を述べると帝は目を見開いて暫く考え込むような表情とポーズをした後…一言「え?」と言った。
……………?いや僕悪い事したよね?え?何で?
勝手にいなくなったら殴られるのでは??
「絶対に、殴らないから。」そう言いながら帝は僕の頭を優しく撫で、軽く抱き締めた。
_____________________傍観者がいると知らずに。
……僕と帝は顔を見合わせ、少しクスッと笑った。
next𓂃 𓈒𓏸☀︎*.。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!