3月18日。今日は帝と凪兄さんの誕生日で皮肉にも帝が余命宣告された日の最終日だった。
朝早く起きた僕は早速帝の病室へと向かった。お祝いを持って。
何か雑音が聞こえたが無視する。
すると髪が赤みがかった知らない女の子が「凪、邪魔すんな空気読め」と兄さんの頭を思いっ切り叩いていた。朱香さんも「凪……?」と少し呆れたような表情をした。凛ねぇは水溜まりで溺れ死んだ虫を見るような目で雑音の主を見ていた。
僕は「勿論。」と即答し、帝が袋を開けると辺りに珈琲の匂いが漂った。
帝は珈琲が好きと言っていたので凪兄さんに頼み、ネットで『澤井珈琲』という有名な珈琲を買っておいたのだ。
帝はとても嬉しそうに微笑むと「珈琲入れてくるね。ちょっと待ってて。」と席を立った。
珈琲が運ばれて来るのを待っていると髪が赤みがかった女の子が口を開いた。
僕が聞き返すと髪が赤みがかった女の子は少し悲しそうな顔をしてから「やっぱり覚えてないよね」と言った。
また悲しそうな顔をされたので必死に記憶を辿ってみる。…すると昔僕にそっくりの顔をした女の子が「碧依は可愛いね。私が守ってあげるから。」と言っていたのを思い出した。
恐る恐る尋ねてみる。すると女の子…紅音は表情を明るくし、「覚えてたんだ!」と喜んだ。
そう言うと僕に「図書館戦争」という本を渡した。とても面白そうだったので「今読んでいい?」と聞くと直ぐに「うん」と返事が返ってきた。
どれくらい時間が経っただろうか。半分ぐらい読み進めたところで帝が帰って来たので皆で珈琲を飲んだ。
……情けない事に凪兄さんはブラックが飲めず1人だけミルクを入れていたが。
……………小3の双子の妹と彼女と従姉妹と双子の弟に負けてどうする長男。
next𓂃 𓈒𓏸☀︎*.。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!