帝さんが目を覚ました。
僕は直ぐに謝って、謝って、ずっと謝った。
許されない事をしたのも、ただの自己満足なのも分かっていて謝った。するといつもの様な優しい声が「気にしないで。」と言った。…でも、帝さんはまた目を閉じると眠ってしまった。それを見た兄さんが僕を手招きして病室から出る様に言った。大切な話があるから、と。
嫌な予感がするのに、聞かなきゃならない気がして、僕は病室から出た。…帝さんの顔をドアを閉める時まで見詰めていた。
勿論。と言って年齢と名字を言うと兄さんは顔を顰めて…聞いた。
そう僕に尋ねた兄さんの声色が何時になく真剣だった。
何でそんな事、と言いかけた僕は兄さんの顔を見ていたら続きを言えなくなった。そして一言、そうだよ。と返答すると兄さんは「これから言う事を聞いても取り乱さないで欲しい。」と悲しそうな顔をして言ったんだ。
ヒュッと口から息が洩れた。「ほんとうに…?」と尋ねる声は罅割れていて自分の声だとは思えなかった。
そこが病院だという事も忘れて僕は叫んだ。最後の方は掠れて、言葉になっていなかった。
兄さんは、ゆっくり、諭すように答えた。
そのまま僕は帝さん…いや帝兄さんと過ごしたあの丘に言った。もう、全てがどうでもよかった。ただ帝兄さんが生きている事だけが僕の生きる意味だった。…帝兄さんが死んだら僕はどうすればいいんだろう。
誰もいない丘でそう呟いた。
next𓂃 𓈒𓏸☀︎*.。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。