帝が居なくなった次の日。碧依が病院に行きたいと言うので凪兄さんに頼み込んで連れて来てもらった。
帝の病室だった所に入ろうとすると隣の病室から怒鳴り声が聞こえた。
…お姉さんが自殺したのか。大変だなと思いそのまま病室に入ろうとすると廊下に出てきた人に見覚えがあった。
確か同じクラスの新瀬 真冬だ。
ぼそりと、近くに居なければ分からない程の声で呟く。
不意に顔を上げた彼女は僕の存在に気づきあからさまに顔を歪める。
少々八つ当たりも入っているが確かに苦しみが分からない人はそう言うだろう。
その人の苦しみはその人しか分からないのに。
僕が言った言葉…正確には碧依が呟いた言葉を聞いた瞬間真冬は目を見開き「え?」と声を漏らした。
真逆そんな返答が返ってくると思わなかったのだろう。
それだけやっと言った感じだった。
そう言い今度こそ病室に入って行った。
next𓂃 𓈒𓏸☽・:*
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!