第5話

すなお
2,146
2019/04/19 08:01
朝4時半白鳥沢学園に男子バレー部が集合してバスに乗り込んだ。昨日1日考え込んで、とりあえず、心の整理ができるまではいつも通りでいようという結論に達した。
来栖蓮
来栖蓮
天童せーんぱいっ!
天童覚
天童覚
わっ、蓮チャン??
来栖蓮
来栖蓮
おはよーございまーす!
天童覚
天童覚
おはよう?
来栖蓮
来栖蓮
私と付き合ってくださーーーい!
天童覚
天童覚
…ごめんなさい
来栖蓮
来栖蓮
久しぶりに最後まで言いましたよ笑笑
天童覚
天童覚
そうだっけ?
来栖蓮
来栖蓮
遠征頑張りましょーね!
いつもはばっさりきってくる天童先輩も、流石に気づいたのか少し間があった。それでもいつも通りを演じないと。
白布賢二郎
白布賢二郎
荷物こっち持ってこいよ
来栖蓮
来栖蓮
え?
隣を通り過ぎながらボソッと賢二郎が言った。いつもは真っ先に牛島先輩の隣を乗りに行くくせに。
マネの仕事を終えてバスに乗り込んだ時、みんなが着席している中賢二郎だけが上の荷物入れに手をかけて立っていた。入ってきた私に気づくと軽く手を挙げた。
来栖蓮
来栖蓮
座ってればよかったのに
白布賢二郎
白布賢二郎
お前窓側じゃないと酔うだろ
おかしい。賢二郎がこんなに優しいなんて。
来栖蓮
来栖蓮
…賢二郎熱あるの?
白布賢二郎
白布賢二郎
…ぶっ飛ばすよ?
お言葉に甘えて窓側の席に着く。いつもは絶対通路側に座る。酔っても、天童先輩が見れるから。でも、今日はそういう気分にはなれなかった。
白布賢二郎
白布賢二郎
お前昨日ほとんど寝てないだろ
来栖蓮
来栖蓮
なんで?
白布賢二郎
白布賢二郎
目、充血してる
来栖蓮
来栖蓮
嘘。バレてる?
白布賢二郎
白布賢二郎
他は気づいてないと思うけど、寝てろ起こしてやるから
来栖蓮
来栖蓮
やっぱり、賢二郎熱が…
白布賢二郎
白布賢二郎
人をなんだと思ってんだよ
来栖蓮
来栖蓮
賢二郎が優しいなんて、熱があるか、槍が降るか…
白布賢二郎
白布賢二郎
いーから寝ろ。
そう言って通路側から顔を出して牛島先輩に話しかけた。ガン無視されてたけど。うとうとしてきて、頭がグラグラする。意識が遠のいていく中で、頭を横に倒された気がした。起きた時に賢二郎の肩を借りて寝ていて、飛び起きた。
来栖蓮
来栖蓮
おわっ!?
白布賢二郎
白布賢二郎
ん…うるせー
来栖蓮
来栖蓮
ご、ごめん
ちらほらとみんなも起き始め、角を曲がったら1校目、北信越の強豪長野冥領高校が見えてきた。
体育館に入ると、すでに新潟赤巻高校も来ていて、すぐに試合が開始された。牛島先輩は終始絶好調で、瀬見先輩と賢二郎を使い分け難なく白星を挙げていく。
2日目の午前中もなんのも話題もなく勝ち続け、結局負けたのは冥領との試合の1セットだけだった。
バスに乗り込み、次はついに東京。
牛島先輩をユースの寮に下ろして次は音駒高校に向かう。東京は長めの3日間。牛島先輩がいない状態で東京は凌がなければならない。精神的にも、身体的にもきつくなる。
2日目、午後8時。音駒高校に到着した。
夜ご飯はもう済ませてあるので、直接体育館に向かい、夜練に参加させてもらう。
黒尾鉄朗
黒尾鉄朗
長旅ご苦労さん
来栖蓮
来栖蓮
黒尾さん!
黒尾鉄朗
黒尾鉄朗
蓮ちゃん久しぶり
来栖蓮
来栖蓮
お久しぶりです!
黒尾鉄朗
黒尾鉄朗
あれ?ウシワカは?
天童覚
天童覚
若利クンはユースだよ〜〜
黒尾鉄朗
黒尾鉄朗
ふっ。ヨユーだな
来栖蓮
来栖蓮
そんなことないですよ!!
天童覚
天童覚
そーだそーだー
黒尾鉄朗
黒尾鉄朗
明日から楽しみだな
来栖蓮
来栖蓮
負けません!
黒尾鉄朗
黒尾鉄朗
じゃあゆっくり休んでね〜
天童覚
天童覚
おつかれー
こっからは天童先輩が全部仕切るんだ。
天童覚
天童覚
じゃあ荷物置いたらとりあえずサーブ練しててー
ざ、雑!!!
天童先輩は、ゆるゆると監督の元へ向かい、メニューを聞き始めていた。絶対忘れる。この人言われたこと絶対忘れるわ。
天童覚
天童覚
え?どしたの蓮チャン
来栖蓮
来栖蓮
天童先輩言われたこと忘れるでしょう?だから、補佐です
天童先輩の横に並び、監督の指示を聞いてノートにメモを取る。指示を聞き終わって歩き出した天童先輩がいきなり振り向いた。
天童覚
天童覚
ありがとネ
来栖蓮
来栖蓮
え?
天童覚
天童覚
俺、正直自信ないの。まとめれる。だから蓮チャン居てくれてありがと
いつもはヘラヘラかわすくせに、こういう時ど直球でくる先輩はずるい。
来栖蓮
来栖蓮
べ、別に天童先輩の為とかじゃないですからね?!
天童覚
天童覚
フーン?
ニヤニヤ顔でみんなの輪に戻っていく天童先輩を見ながらも顔の赤みは引かない。やっぱり好きなんだよなぁ。

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