朝4時半白鳥沢学園に男子バレー部が集合してバスに乗り込んだ。昨日1日考え込んで、とりあえず、心の整理ができるまではいつも通りでいようという結論に達した。
いつもはばっさりきってくる天童先輩も、流石に気づいたのか少し間があった。それでもいつも通りを演じないと。
隣を通り過ぎながらボソッと賢二郎が言った。いつもは真っ先に牛島先輩の隣を乗りに行くくせに。
マネの仕事を終えてバスに乗り込んだ時、みんなが着席している中賢二郎だけが上の荷物入れに手をかけて立っていた。入ってきた私に気づくと軽く手を挙げた。
おかしい。賢二郎がこんなに優しいなんて。
お言葉に甘えて窓側の席に着く。いつもは絶対通路側に座る。酔っても、天童先輩が見れるから。でも、今日はそういう気分にはなれなかった。
そう言って通路側から顔を出して牛島先輩に話しかけた。ガン無視されてたけど。うとうとしてきて、頭がグラグラする。意識が遠のいていく中で、頭を横に倒された気がした。起きた時に賢二郎の肩を借りて寝ていて、飛び起きた。
ちらほらとみんなも起き始め、角を曲がったら1校目、北信越の強豪長野冥領高校が見えてきた。
体育館に入ると、すでに新潟赤巻高校も来ていて、すぐに試合が開始された。牛島先輩は終始絶好調で、瀬見先輩と賢二郎を使い分け難なく白星を挙げていく。
2日目の午前中もなんのも話題もなく勝ち続け、結局負けたのは冥領との試合の1セットだけだった。
バスに乗り込み、次はついに東京。
牛島先輩をユースの寮に下ろして次は音駒高校に向かう。東京は長めの3日間。牛島先輩がいない状態で東京は凌がなければならない。精神的にも、身体的にもきつくなる。
2日目、午後8時。音駒高校に到着した。
夜ご飯はもう済ませてあるので、直接体育館に向かい、夜練に参加させてもらう。
こっからは天童先輩が全部仕切るんだ。
ざ、雑!!!
天童先輩は、ゆるゆると監督の元へ向かい、メニューを聞き始めていた。絶対忘れる。この人言われたこと絶対忘れるわ。
天童先輩の横に並び、監督の指示を聞いてノートにメモを取る。指示を聞き終わって歩き出した天童先輩がいきなり振り向いた。
いつもはヘラヘラかわすくせに、こういう時ど直球でくる先輩はずるい。
ニヤニヤ顔でみんなの輪に戻っていく天童先輩を見ながらも顔の赤みは引かない。やっぱり好きなんだよなぁ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。