今日は土曜日。
部活は休日なので午前練習。
体を起こして支度をし、
学校へと向かう。
自分の靴箱の前に立つ。
…開けるのが、怖い……。
案の定開けると中には写真があった。
また、狂気が増している気がする…。
写真は登校中の私。
見た限り今日のものと思われる。
しかも写真の四隅には
細い赤いミシン糸が結ばれており、
裏側に赤のマーカーペンで
「いつも見てるよ」と書かれていた。
……怖い。
正体も明かさずに好意だけを伝えてくる
相手の意図が。
私の反応を楽しんでいる。
今もどこかで、見ている…。
後ろから突然まふ君に挨拶されて
驚くと同時に写真を鞄にしまい込む。
まふ君に、見られてはいけない。
まふ君だけじゃなくて
皆は優しいから心配させてしまうかもしれない。
きっと皆は忙しいのに犯人を捜してくれる。
そんな迷惑は…かけたくない……。
久々に信じられると思った
大切な人達を、少しも傷つけたくない。
まふ君は私の異変に気づいたみたいで
不思議そうな顔をしていた。
尋ねないでいてくれたのは
優しさだろうか。
今日は浦島坂田船との合奏。
うらた先輩に話しかけられて
肩が震える。
またボーッとしてしまっていたのか。
志麻先輩が休憩を告げる。
私を気遣ってくれたみたい。
私は何をしているんだ……。
何に怯えているんだろう。
結局皆に迷惑をかけている…。
世界の全てに怯えていた
かつての自分が脳裏をよぎる。
ストーカー、か。
私の何が好きなんだろう。
私の何を見ているのだろう。
申し訳なさと気持ちの切り替えのために
階段を下り、部室棟の庭に出る。
綺麗な花が咲き誇る花壇。
風に揺れる香りのいいお花を見ていると
心が癒されて穏やかになる。
私が花壇のお花を見つめていると
後ろから肩を叩かれる。
高橋「桜坂さん。」
高橋「驚かせてしまったみたいだね。大丈夫?」
高橋君は1度放課後に告白されて以来、
私を避けているように見えた。
私と話すなんて
気まずいからだろうと思っていた。
高橋君は私の方を向いてにこやかな顔でいる。
私は少し身構えていた。
彼がストーカーかもしれないと
疑っているから。
彼に告白された次の日から
ストーカー行為が始まったのだ。
高橋「それより。花壇にいるなんて
どうかしたの?今部活中じゃない?」
高橋「僕は美化委員だから花壇の手入れを
頼まれているんだ。」
彼はにこやかに話す。
それから5分ほど、高橋君と
お花を見ながら話した。
彼も花に詳しくて
2人してお花の話で盛り上がった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!