翌日の朝。
何気なく1人で登校、教室に向かう。
少し早く着いたので読書をしていたら
どうも教室の入り口付近が騒がしくかった。
軽音部員の皆は容姿端麗だから
学校中から注目されている。
登下校、移動教室などでは
廊下にいる生徒達がざわめく。
最初こそ驚いたが、
いつも一緒にいるから慣れてきた。
でもいつもは教室まで着いて来ないはず。
ライブの次の日だからかな…?
私が苦笑いで言うと
まふ君が教室の入り口の方を向いて
生徒「「「あ!桜坂さんだ!」」」
まふ君の言葉を遮るように
何人かの生徒が私を指差して
名前を呼んでいた。
中にはリボンやネクタイの色が違う、
つまり他学年の生徒もいた。
私、何かしたかな…?
私はまふ君の提案に渋々乗って
教室の入り口に向かった。
生徒「「「桜坂さん!」」」
生徒「ライブ、かっこよかったよ!」
生徒「先輩のファンになっちゃいました!」
生徒「ドラム凄かったー!」
すごく笑顔でこんな大人数に
褒められたのは初めてだ。
コミュ症が出ないように
私も精一杯の笑顔で答える。
生徒「あのドラムって……」
生徒「歌声綺麗で………」
生徒達が1人1人別のことを話すから
対応に困っていると
予鈴2分前に坂田君が到着。
生徒「きゃー!坂田君!」
生徒「近い、近い!」
坂田君の登場で女子生徒の
テンションは高まる。
でももうクラスにいないと
まずい時間だ。
私は何か声を掛けようにも
こんなに好意を向けられたのは
久しぶりだし、コミュ症が出て
この大人数に言う勇気が出なかった。
生徒「本当だ、やばい!」
生徒「帰らないとー!」
生徒「坂田君、桜坂さんじゃあね!」
元気よく手を振る坂田君とは
対照的に、私は力なく振る。
結局私の中には困惑だけが残り、
坂田君と教室に入った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!