しばらく女子は誰も手を挙げなかった。
仲の良いグループ内で
「誰かやりなよー。」と
押し付けあっている。
私は覚悟を決めて手を挙げた。
声は小さくなってしまったが、
皆がこちらを向いたので
気づいてもらえたようだ。
坂田君が嬉しそうに振り返り、
まふ君が意外そうに
私を見つめる。
センラ君とも目が合った。
私が普段クラスで
行動を起こすことはほとんどない。
クラスの皆も少し驚いていた。
生徒「桜坂さんでいいですか?」
前に立つ学級委員が
黒板に私の名前を書く。
誰も反対しなかったので、
私は実行委員になった。
坂田君がもの凄い笑顔で
私に言った。
私も笑顔で返す。
坂田君となら、
楽しくできそうな気がする。
何と、実行委員の仕事は今日かららしい。
部活への報告はまふ君とセンラ君に
お願いしてあるので大丈夫。
坂田君と集会場所になった
教室に向かう。
仕事、と言っても今日は
顔合わせと仕事の内容確認くらい。
久々にこういう会議に出て
緊張していたけど、
隣に坂田君がいたので安心できた。
ふと時計を見て、坂田君が焦り出した。
と思ったら急に走り出した。
私の手を掴んで。
坂田君はとても足が速いので
私は引きずられている状態。
でも手の掴み方は優しいし、
いつもよりゆっくり走ってる…?
坂田君はもっと速く走れるはずだけど、
私のことを気にしてくれるのかな……?
私が引きずられながらも
坂田君の方を見ると
何も言わずにニコッとしてくれた。
心が暖かくなった気がした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。