第21話

盲目の神父
108
2022/02/21 10:16
タツヤ
タツヤ
っ…!
風丸
風丸
これは…
2人は目を疑った。
窓ひとつない部屋の中。雲の天井に、幾何学模様の壁。床にはおもちゃのレールが敷かれてあり、その上を電車が走っている。小さなサッカーのゴールネット、しかしその中に放り込まれているのはボールではなく電車。
…まるで幼い子の部屋のようだ。
タツヤ
タツヤ
ここが…雫さんの……
恵と龍は話し始めた。
恵
雫の生い立ちには、天津が深く関わっている
風丸
風丸
天津…あいつが…
恵
雫の障害が発覚した時、天津は、この部屋につい最近まで雫を閉じ込めていたの
タツヤ
タツヤ
なっ…、なんで…!
恵
…わかるわけないでしょ
恵の言葉には、かすかに怒りを感じた。
恵
でも、雫はこの部屋に閉じ込められても、何も疑問や、不自由は感じなかったでしょうね
風丸
風丸
…たしかに、この部屋には情報媒体がない…人は長い間同じ環境にいると、その環境が当たり前だと感じてしまう…
龍
でも、天津が作った環境は、この部屋だけじゃない。…彼女は、雫の思考までも強制したんだ
タツヤ
タツヤ
思考まで…それってどういう…
龍
彼女の教育は狂っていた。雫が4歳のとき、彼女はこの部屋に別の子供を連れてくるようになった
風丸
風丸
子供を…その子供は、外にいた子供か?
龍
ああ、それも虐待を受けてきたり、差別を受けてきたりね…
龍
そんな子供達と触れ合っていく内に、彼は「子供は親の元にいるべきではない」という考えと、「エイリア石があれば、障害者は救われる」という考えが生まれたんだ
タツヤ
タツヤ
そんな…そんなの…
恵
「子は親がいないと生きていけない。しかし、親の都合に振り回されて、いつも不幸になるのは子供の方だ」…
恵
「障害者は普通ではない。普通ではないから除け者にされる。人の輪に入るには、障害者は普通にならないといけない」…雫がよく言っていたわ
龍
残酷だよ。…でも、雫に救われた人も沢山いる。……僕達もその1人だ
タツヤ
タツヤ
あなた達も…?
恵
ええ、元々は雫の見張りとしてつけられたんだけど…家庭環境の所為で私達2人とも病んでたのよね
龍
でも、雫と出会って変わったと気づいた。…雫はいつも子供達に言っていた。「必ず私がみんなを救って見せるから」って
龍
僕達もその言葉に何度も救われた
恵
私も、この石を手に入れたら、少しは世界が変わったように見えたわ。…でも、こんな幸せは偽りでしかない
恵
…障害者を救うエイリア石…あのエネルギーの正体は、人の魂のエネルギーだった
風丸
風丸
えっ…じゃあ、まさか……
風丸は、雫の言葉を思い出した。
「勇気を出して、外の世界へと旅立った人達が何名かいます」
「辛くなったらいつでも帰ってきて良いんですよといっておいたのですが…あれから顔も見ておりません」
恵
…そう、この施設で育った者の魂よ
タツヤ
タツヤ
なっ…じゃあ、あの施設は…
龍
…孤児院の皮をかぶった、天津の実験のエイリア石のエネルギーとなる子供を収容しておくための施設だ
風丸
風丸
雫は、このことを知っているのか?
恵
いいえ、知らないわ。あの子は何も知らないの。自分がなぜ13年も監禁されていたのかも、なぜ孤児院を作ってくれたのかも…
龍
でも、雫の気持ちは本当だ。雫は本当に、不幸な人を救いたいって…そう…思っているんだ…

プリ小説オーディオドラマ