第16話

文化祭⑤
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2021/12/28 00:11

「これより、〇〇高校文化祭を開催いたします。」

そんなアナウンスと共に文化祭は始まった。



私たちのクラスのクレープ屋は思っていたよりも人気で、前半の担当だった私は大忙しだった。


「チョコホイップふたつお願いしまーす!」


「はーい!」


「いちごカスタードひとつです!」


次々と入る注文に追われながら、私たち受付担当と、厨房担当がひとつになって対応していく。

受付の私でもこんなに大変なのだから、厨房担当はもっと大変だろう。

出来上がったクレープを笑顔でお客さんに渡した私は、ふぅ、とため息をついた。


「ゆなー!お疲れ!」


声がした方向に顔を向けると、そこには着ぐるみ姿の美奈がいた。

宣伝から帰ってきたのだろう。片手には宣伝用の看板を持っている。


「お疲れ。美奈たちの宣伝のおかげでお店、大繁盛だよ。」


「えぇ、ほんと?頑張った甲斐があったわー。」


本当に宣伝担当の人たちには感謝しかない。

クレープが好きな小さい子供をターゲットにするため、暑い着ぐるみを着ながら校内を駆け回って宣伝してくれたのだから。



「大倉さん、これ渡してくれる?」


すると突然、後ろからそう声をかけられクレープを持たされた。


「あ、わかった!」


すっかり美奈と話し込んでしまった私は、まだ仕事中だった、と慌てて気を引き締め、クレープを渡しに行く。

美奈は、頑張ってねーと言いひらひらと手を振って消えていった。


「すみません、お待たせしました!いち……。」



えっ。



そこには、椎名くんがいた。

いきなりの椎名くんに、私は戸惑いを隠せなかった。

それは椎名くんも同じのようで、目を大きく見開いてこちらを凝視している。



「い、いちごバナナです。」


緊張しながらおずおずとクレープを差し伸べる。


「ありがとうございます。」


小さな声でボソッと呟きながら椎名くんがクレープを受け取る。


椎名くんとまともに話せたのはいつぶりだろうか…。

こんなやりとりにも、浮かれてしまう自分がいる。