第18話

椎名side 出会い
38
2021/12/29 02:33




先輩を好きになったのは、入学してすぐのことだったーーー。





4月の終わり。

桜の花びらも散り始め、学校にも慣れた頃。

日直だった俺は、担任に頼まれてクラス全員のプリントを職員室まで運んでいた。

面倒くさくて、早く終わらせたい一心で早足で廊下を歩いていた。

そういえば次の授業の宿題やるの忘れたわ、なんて考えながら…。

放心状態に近かった。



そして曲がり角を曲がったとき、それは起こった。




嫌な予感はしていた。




「うわぁっ、」


そんな声が聞こえたと同時に体が少しよろめいた。

持っていたプリントが床に散らばる。

驚いて顔を上げると、そこには尻もちをつき、きょとんとしながらこちらを見上げている女子がいた。

どうやら、俺は今、この人とぶつかったみたいだった。


「あ、すみません!大丈夫でしたか?!」


彼女はいきなり我に返ったように、心配そうに尋ねてくる。

どう考えても、少しよろめいただけの俺と、ぶつかった拍子に尻もちをついて転んでしまった彼女とでは、心配されるのは俺の方じゃないのに…。


「こちらこ…」


こちらこそすみませんでした、と言うとしたが、その言葉は彼女の叫び声によって遮られた。


「あーーー!

プリントが!ほんとすみません!」



そして、落ちてしまったプリントに気づいたのか、謝りながらプリントを拾いはじめた。


俺も彼女に加わり、慌てて拾い集める。


俺も十分悪いのに、こんなに一方的に謝られて何だか後ろめたさを感じた。

このままじゃ申し訳ない気がしてきて一言謝ろうと思い、顔を上げた、瞬間…。


「はい!どうぞ!」


と言いながら笑顔でプリントの束を渡してくる彼女と目が合った。


「あ、ありがとうございます。」


俺が返せた言葉は、それだけだった…。


彼女は俺にプリントを渡すと、小走りに去っていってしまった。

まさに嵐が過ぎ去ったような、そんな時間だった。


俺は、そんな嵐のような彼女の後ろ姿を無意識に見つめてしまった。

一瞬の出来事だったはずなのに、惹きつけられるようなそんな魅力のある人だった。







学年を表す靴紐の色は、青。


一つ上の先輩だったーーー。





それが俺と先輩の初めての出会いだった。