嫌だ…嫌だけど…
でもこのまま告白を続けたところで、状況はずっと同じままなんじゃないかと考える時もある…。
「それでいいんだよ。」
空がニヤリと笑った。
「どういうこと?!」
「なんで?!!」
私と美奈の声がハモった。
「いつも告白してきた奴が、いきなり話しかけて来なくなったらおかしいなって思うだろ?」
思うかもしれない…。
空が続ける。
「それで、自然にゆなのことを考えるようになり、意識しはじめる。」
「離れてから気づく気持ちもあると思うんだよ。」
そう言い、空はなぜか自慢げにしている。
「そんな上手くいくかな〜?」
美奈が、眉間に皺をくっきり寄せながらぼやく。
美奈はそんなことを言っているけど、私は、やってみる価値があるんじゃないかと思う。
空の言う通り、私ばかりが話しかけていては椎名くんとの関係はずっと平行線のままだ。
「うん、やってみる。」
「お、いいじゃん!頑張れ」
「え?!ゆなマジでやるの?!」
「うん、今のままじゃ何も変わらないから。」
私は、真っ直ぐ2人を見つめた。
なんだか、謎の自信が湧いてきた。
「じゃ、作戦立てないとな!」
空が身を乗り出して、なんだか楽しそうにしている。
美奈も、私の真剣さを見て、やっと納得してくれたらしく、
「よぉし、こうなったら絶対好きになってもらうぞ!」
などと言ってる姿は、私よりやる気に満ちているようにも見える。
「んじゃ、まずどんくらいの期間、話しかけないことにするかだよな〜。」
「と、とりあえず、1週間我慢してみる。」
意を決した思いで言った。
私にとっては、1週間我慢するのも辛いことなのだ。
あんまり長い間、話しかけないでいると、椎名くんのことだから、私のことを忘れてしまうかもしれない。
「え、短すぎない?」
「せめて2週間…!頑張ってみない?」
2人が口を揃えて言った。
え…。
1週間って短いの…?
椎名くんから、話しかけてくれることなんかないだろうし、丸々2週間話すことができなくなるってことになる。
「わ、わかった。2週間頑張る。」
私は、渋々頷いた。
1週間じゃ、せっかく我慢しても意味のない行動になってしまうのなら、2週間でも、頑張ってみようと思えたのだ。
でも、私が話しかけなくなったら、椎名くんとの接点は、何も無くなってしまうだろう。
椎名くん、さすがに2週間じゃ私のこと忘れちゃわないよね…?
大丈夫だよね…?
どんどん不安が押し寄せる。
「辛くなったり、我慢できなくなっちゃったりしたら、話しかけちゃってもいいんだからね?」
暗い表情をしている私をみて、美奈が助け舟を出す。
空も複雑そうな表情でこちらを見つめている。
「うんん。話しかけないで頑張る…!」
不安になってちゃだめだ…!
私には、今はこの作戦しかないのだ。
やれるだけやってみよう。
きめたからにはちゃんとやらないと。
「ゆな〜!!よぉし、えらいえらい!頑張ってね!」
そう言いながら、美奈が抱きついてくる。
「辛くなったら、いつでも俺に相談しろよ?」
空も微笑みながら言った。
ありがとう。2人とも。
私、頑張るよ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。