あなたside
拳をぐっと握りしめて、一言一言噛み締めるように話す濵ちゃん。
そんな姿を見るのは初めてで、少し戸惑った。
嘘なんかな...。
濵ちゃんがうちを好きなわけがない。
切なく微笑むその姿は、とても苦しくて、
美しくて、溺れてしまいそうやった。
...いや、溺れてしまった。
なんでやろ...
胸が苦しい。
藤井さんに失恋したから?
違う。
誤解されたまま終わりたくない。
認められなくても、
たった今気づいた恋心を知ってほしい。
こんなのわがままだよね。
でも、いいや。
うちに右手を差し伸べる濵ちゃん。
きっとその手を振り払えってことなんやと思う。
でもうちは、その手を振り払うつもりはなくて、
グッとその手を掴んだ。
視界には驚いた表情の濵ちゃん。
それさえも愛しく思えて、勢いに任せてキスをした。
初めてのキスは、ブラックコーヒーの苦さと、
カフェラテの甘さが混ざりあって、とてもちょうどよかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!