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第2話

雨の悲劇(後編)
72
2021/07/29 13:52
しのん
(私はずるい……)
しのん
(桜峰さんたちにイジメられたくない。
あこにも嫌われたくない。
だから、陰であこを助けて……)
しのん
(私は卑怯者だ——)
しのん
はあっ、はあっ、
あこを見つけなきゃっ
しのん
(あのメッセージ、
あこはもう全てを
終わらせるつもりなんだ)
しのん
(私、まだあこに謝ってない。
もしまだ間に合うなら、
今度は堂々とあこを守るからっ)
しのん
だから、一人で逝かないで、
あこっ——
※ ※ ※
しのん
あこ!
あこを探し回って、ようやく見つけた。
あこは学校の屋上の
フェンスの向こうに立っていた。
しのん
あこ……なに、してるの?
そんなふうに尋ねながら、
頭の端では理解していた。
しのん
(あこは、飛び降りるつもりなんだ……)
しのん
あ、危ないよ。
どうやってそっちに行ったの?
フェンス、こんなに高いのに……
しのん
(違う、言いたいのは
こんなことじゃない)
前島 あこ
前島 あこ
……フェンスの一か所にね、
抜け穴があるんだよ、ここ。
私、よく授業サボって
屋上に来てたから、知ってるんだ。
しのん
そ、そうなんだ……。
でも、雨降ってるし、滑って落ちたら
危ないから、こっちに戻ってきて!
前島 あこ
前島 あこ
…………
でも、あこは笑顔で
私を見つめたまま動かない。
しのん
あこ、お願いだから……
前島 あこ
前島 あこ
しのん、ごめんね。
私……確かめたかったの
しのん
……え……?
前島 あこ
前島 あこ
だからお願い、証明してみせて
しのん
あこ、さっきからあこが
なにを言いたいのか、
全然わからないよ!
あこはやっぱりなにも話してくれない。
あこは両腕を広げた。
ぐらりと、その身体が後ろへ傾く。
しのん
待って……待って、
逝かないで、あこ!
慌ててフェンスに駆け寄るけれど、
あこの姿が目の前から消える。
しのん
あこっ、嫌ああああああっ
どさりと、嫌な音がした。
ガシャンとフェンスにしがみつき、
私は絶叫する。
しのん
私のせいだっ、自分が可愛くて、
標的になりたくなくて、
私は苦しんでるあこに
気づかないふりをしたっ
しのん
だからあこは……っ
私が死なせたんだ……っ
どれだけの雨が私の涙を洗い流しても、
この黒く染みついた後悔だけは、
消えることはなかった。
※ ※ ※
あれから、一ヶ月後——……。
作者
作者
今回はここまで。
————𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭…————

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