幼馴染の彼と2人、掲示板を見上げ。
クラス表の中にある自分達の名前を探す。
後ろが詰まっているので急いで目を通して行く。
同じクラス記録が更新され、今年で10年連続だ。
思わず両手を突き上げて喜ぶと、
ころちゃんは口元に人差し指を当てる。
急いで両手を下げ、恥ずかしく思いながら脇に避けて。
差し伸べられた手を掴む。
いつもの温もりが私に安心感をくれた。
長い間一緒にいる彼は、
私の方向音痴などお見通しなのだろう。
言い方はともかく。
いつだって彼の行動には、思いやりが溢れている。
それを知っている私は、つい。
その優しさに甘えてしまうのだけど。
今は自覚がないフリをして。
いつも通りの表情で、隣を歩く。
名前を呼ばれているのに気づかず、上の空だったらしい。
少し心配そうな彼に、笑って見せる。
私がいつものように返せば、安心したように彼も笑って。
私をあしらう事に慣れた感たっぷりの彼に、
ボソッと不満を漏らすけど。
事実を言われ、何も言えなかっただけなのに。
私が迷う事無く肯定した事が、少し想定外だったようで。
若干煽られながら、半目で彼を見つめる。
そうこうしている間に教室前まで着いて。
顔が強ばっている彼が開く扉の先を見つめた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!