ガラッ。
扉を開けた途端、クラスメイトの視線が
一瞬集まったのが分かる。
ちらっところちゃんの方を見ると、
ころちゃんも私の方を見ていて。
とても大きな声で喋る気になれず、
脳内で会話を始める。
私達くらい長い付き合いになると、
お互いの思っている事が簡単に分かってしまう。
それが、困る時もあるのだけど。
何となく気が合って、いつも一緒にいる幼馴染。
誰かに私達の関係を聞かれたら、いつだって
そう答えていたし、答えるものだと
疑っていなかったのに。
そんな考えが打ち砕かれる日も近い事を、
今の私は知る由も無い。
【その頃のクラスメイト】
...ガラガラッ
また扉が開かれ、今度は大人の男の人が姿を見せる。
ころちゃんの予想は大当たり。
The・先生という感じのするその人は
山崎先生と言うらしい。
1人安心しながら、間延びしたクラスメイトの
返事を聞き、ころちゃんを振り返る。
どやぁ、とした顔をする彼。
真顔で遠慮がちにこう言った。
ムカつく、と言いながらも彼は笑顔で。
私も憎まれ口を叩いて笑っていると。
ふわり、と頭に手が乗せられて、
くしゃくしゃと撫でられる。
髪がぐしゃぐしゃになったと抗議の目を向ける。
その問いに、彼は何故か困ったように苦笑して。
上手く、私をはぐらかした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!