全速力で家に帰った私は、部屋に鍵をかけ。
乱れた息をそのまま、呟いた。
彼が考えている事が、全然分からない。
唇に触れると、ころちゃんの唇の感触を思い出してしまい。
フルフル、と首を横に振る。
まだ灯りの点かない、ころちゃんの部屋を見つめてから。
クッションに顔を埋めた。
ー.............................
いつの間にか明るくなった部屋で、目を覚ます。
クッションを抱えたまま、眠ってしまったらしい。
無理な体勢で寝たせいか、身体中が痛む。
顔をしかめながらゆっくりと立ち上がり...制服を手に取る。
正直、顔を合わせたくないと思いながら。
リビングに降りて行くと。
キッチンから出てきたお母さんが、
ころちゃんからの伝言を教えてくれた。
何となく予想はしていたけど、分かりやすいと辛い。
"喧嘩はしてない"と嘘をついて。
朝ご飯も早々に済ませ、家を出た。
いつも2人で歩く道を、1人、駆けて行く。
もどかしく思いながら、昇降口で上履きに履き替え。
教室の扉を勢い良く開けると。
一瞬だけ驚いたようにこちらを見たころちゃん。
すぐに視線は逸らされた。
私が沈黙に耐え切れず。
仲直りしたくて呼びかけても。
彼は手元の書類を整理する手を止めない。
さすがに怒りを込めると。
やっと手を止めたころちゃんが言った。
語尾が小さすぎて、聞き取れない。
怒りは既に、疑問に変わっている。
もう一度言ってくれる事こそ無かったけれど。
ころちゃんの瞳に嘘が無かったから。
一歩一歩、ゆっくりと距離を縮めて。
額と額が触れそうな距離で、微笑んだ。
ーこれ以上、私に嘘をつけないように。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。