最寄り駅のホームにて。
ころちゃんに先に行かれてしまった私は、頬を膨らませて。
そっぽを向いていた。
そんな私と目が合う方に回り込んで来たころちゃんが、
少し不安そうに尋ねて来て。
一瞬だけ悪い事をしているような気分になったけれど、
飲み込んで。あえて拗ねた声で返事をした。
ちょっとヤバいと考え始めたのか。
焦りの混じる、彼の謝罪の声。
許しても良いのだけど、折角だから。
もう少し拗ねてみる事にした。
いつも見れない、ころちゃんが新鮮で。
ちょっと観察が混じっているなんて、死んでも言えない。
最終手段に出た、ころちゃん。
肩にもたれかかって来て、甘えた様子にキュンとする。
...そして、ほんの少しの優越感。
シュンとした様子の彼の頭を撫でてあげると。
こちらこそ向いてくれないが、頬が赤い。
照れてる?と聞いても。
ツンデレころちゃんは、そう簡単には素直にならない。
とりあえず、それ以上は突っ込まないで置く事にして、
やって来た電車に一緒に乗り込む。
連れられるがまま、着いてきたけど。
肝心の目的地を教えて貰って居ない事に気づく。
早く知りたくて、うずうずしたけれど。
ころちゃんが楽しそうならそれで良い。
ーしばらく電車に揺られ、着いたのは。
私が、まだ遊びに行く約束もしていなかった頃。
雑誌のイルミネーション特集を見て。
行きたいと呟いた所だった。
ギュッ。
気づけば、ころちゃんを抱き締めていた。
私が何気なく言った事を、
覚えていてくれた事だけじゃない。
一緒に来てくれた事が、何より嬉しかったから。
今朝とは逆に。
私が、一歩先を歩いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。