途中でトラブルはあったものの、文化祭は最終日を迎えて。
終わりたくない、と口々に言う私達の最後の楽しみである、
「後夜祭」が始まろうとしていた。
文化祭の余韻を引きずったまま、グラウンドに出ると。
文化祭で出た廃材が各クラスから集められ、
キャンプファイヤー用に積み上げられていた。
はしゃぐ私を見て。
ころちゃんが、からかうように笑う。
その笑顔に、不覚にも。ドキッとしてしまった。
そんな私の態度に、ころちゃんが不思議そうな顔をする。
慌てて悟られないようにごまかすけど、
自分では気づいていた。
ころちゃんに対する気持ちの違和感に。
話していると落ち着かなくて、
心臓がいつもより大きく動いている気がして。
この気持ちに、本当の意味で私が気づけるようになるのは。
もう少し、先のお話。
急いで並びながら、横目でころちゃんを軽く睨む。
コソコソと痴話喧嘩をしていると、
校長先生が開会宣言を始めて、場は一気に静かになった。
先生の話が終わると。委員会の集まりがある度に、
格好良く進めてくれた平井先輩が、壇上に現れる。
みんな頑張ったから、と祈るように手を合わせ。
3位の発表に耳を澄ませた。
そして、サラッと聞こえた、私達のクラス。
2人共、目を瞬かせて。
クラスメイト達の喜びの声を、呆然と聞く。
まだ信じられないけれど、
隣のころちゃんの表情を見れば嘘では無いと分かって。
頑張って良かったと思いながら、総評を待った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!