探していた幼馴染の後ろ姿を見つけて。
見失う前に、呼び止める。
大丈夫。既に心は決まっているから。
彼の声を遮って、微笑んだ。
どんな返事が来ても、受け止める。
それが例え、私の望む答えでは無くても。
戸惑ったような、ころちゃんの視線。
少しだけ、照れてしまった。
こんな私に優しい声と笑顔を向けてくれる彼の事が。
大好きで。
大切で。
愛おしくて。
ようやく気付いた気持ちの全部を伝えた後に残ったのは。
多くを占める達成感と。
ほんの少しの不安。
私の勇気を振り絞った告白に、
フリーズし続けている、ころちゃん。
引き過ぎて言葉が出ないのかも、と不安になり始めた頃。
ようやく口を開いた彼の耳たぶは、真っ赤で。
呆れたような口調で、微笑まれた。
どうして今ずるいと言われるのか。
分からなくて聞いても、はぐらかされて。
相変わらずだなと、むくれる。
___すると。不意に伸びてきた、ころちゃんの手。
何も出来ず固まっていると、頬を包み込まれて。
視界に映るのは、少しだけ悔しげに呟く彼の姿。
何が言いたいのだろう。
彼の言葉を聞けば聞く程、疑問が増えて行く。
適度に解決されたい。
申し訳なく思いながらも、正直に話すと。
1度しか言ってあげないから、良く聞いてね。
そう言った彼の指が、私の唇に触れる。
大好きな幼馴染からの、真っ直ぐな言葉。
あれ、どうして。
嬉し涙が止められない。
必死に隠す私に、今更遅いと言いながら立ち上がった彼。
貴方が笑っただけで世界が輝いて。
その笑顔が、存在が。
私まで幸せにしてくれて。
うん。今、決めた。
これからは私が。
ころちゃんの『幸せ』になる。
________Fin,
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。