それは、とある朝のHRでの事。
先生から知らされた話に、私は何度も瞬きする。
私がずっと暮らして来た平和な街には似合わない、
不穏なニュースだからだ。
少し、帰るのが怖くなって。
不安を吐き出すように、大きく息をついた時。
ジッと此方を見つめる、ころちゃんの視線に気付いた。
首を傾げながら、小さく手を振ると。
ゆっくりと、口パクで伝えられた言葉に。
呆れ半分で、笑みを返せば。
一瞬だけ、不機嫌そうに顔を歪めた彼。
分かりやすく拗ねて、フイっと前を向いてしまった。
どうした物かと考え込む頃には、先生の話は終わって居て。
後で困る事が伝えられて無いと良いけど、なんて苦笑した。
.....本当に聞き逃している言葉があるとも知らずに。
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_____放課後。
手をギュッと握られ、同じような事を言われ続けて早10分。
心配してくれるのは嬉しいし、有難いけれど。
ずっとこの調子だとキリが無いし、ラチが開かないから。
優しく微笑んで、取りに行くよう促す。
不満そうにしながらも教室に向かって行った彼を見送って。
昇降口の壁に寄り掛かった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。