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翌朝。ころちゃんの話に、相槌を打ちながら。
昨日の彼の事を思い出して居た。
良くも悪くも、かなり素直そうな子だから。
貸した時より綺麗になって返って来るのでは無いかと。
心配したり、ついつい悶々と悩んでしまったり。
ころちゃんが隣を歩いて居る事すら忘れ。
放ったらかしにしてしまったのだ。
どんどん不機嫌になる彼に気付かないまま、校門を通って。
ローファーを下駄箱に入れた、ちょうどその時。
何となく聞き覚えのある声と、勢い良く走って来る音。
呼ばれたからには仕方ないが、振り返る事を躊躇しつつ。
ゆっくり、声の聞こえた方向を向くと。
身体に強い衝撃が走り、腰に抱き付かれた。
この子が私に彼氏が居る事を知らないのは分かるし。
この行動に特別な意味は無いと知っているのだけど。
そう簡単には理解できないであろう人が、1人。
静かに、後輩くんの事を睨み続けて居る。
ややこしくなる前に弁解しようと、口を開いた瞬間。
不満げに呟いた後輩くんからの、唐突な告白。
これには、さすがの私も固まった。
1番に反応しそうな彼は、知ってたと言いたげな声で呟き。
後輩くんは無邪気な笑顔を浮かべるしで。
頭の中は、すっかり混乱状態になって居た。
ギャラリーも集まって来て、好奇心の視線が凄い。
だけど彼らは、そんな事お構い無しらしく。
後輩くんは、清々しい程に彼を舐め腐った態度で。
ころちゃんは相変わらず子供っぽく、挑発に乗ってしまい。
私はこの場をどう切り抜けようか忙しなく考え。
結局、心を無にして。終わる気配ゼロの争いを眺めて居た。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。