樹「あれ、北斗?おーい!!ほく…と…」
タイミングが悪かった。
北斗と見覚えのある女。
浮気されて別れたはずのあの女。
散々近くで見てきたんだ。
見間違えるわけが無い。
でも、認めたくなかった。
北斗は目を見開いてこちらを見ている。
女はこちらをにやりと見ていた。
俺はこういう結末が似合うんだ。そうか。
樹「…」
立ち去ろうとした時
北斗「じゅり!!!!待って!!!!」
樹「…」
振り向いて俺は精一杯の笑顔で
樹「幸せにな。」
そう言い残してその場を去った。
なんだ、これ、なんで涙が止まらない?
女を取られたから?
浮気相手が北斗だったから?
なんでなんだ。なんで。
理由のない涙に混乱していた俺のスマホが通知で光った
埒が明かない。
俺は来る通知を無視してスマホを伏せた。
かっこ悪ぃな、俺
そう思いながら目を閉じた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!