帰宅
あ、涼介、もういる
幼なじみや夫婦だから感じる勘ってやつかな。
今、ここにいちゃいけないって気がする。
ポスッ。正座。
バシッ
待って、バシッってなに
私、叩かれたよね、いま、え、?
頭グルッグル回ってる。
肩でゆっくり息をする。
叩かれて顔が横に向いた。
その顔を、その体制を、戻したらどうなる?
また涼介に、愛する人に叩かれるんじゃないか
考えたら考えたで吐き気がする。
肩を掴まれ、思い切り揺らされる。
怖い
顔が見れない
この人を怒らせてはいけない
涼介があなたを抱き上げ、ベッドにあなたを投げた。
お分かりだろうか。転がしたのではない。投げたのだ。
そして、涼介が着ていたシャツを乱暴に脱ぎ、あなたの服を強引に脱がせてきた
ゾクッ…
普段はカッコいいと思える声なのに。
今は、ただただ恐ろしい呪いの声だった。
あなたが怖くて動けないことをいいことにしたのだろうか。
下着を脱がせ、すぐに自分のを入れようとしたのだ。
そしていれる。
ズシッ。
今までにない痛さ。
ヤバい、ほんとに、痛い
そして、なんの躊躇なく動かしてくる涼介。
ほんとに、切れたり壊れたりしたら、どうしよう
無視。
だけど、数分たって、涼介があなたの顔をサラッと撫でた。
ギシギシッとベッドが動く。
痛いはずなのに、感じるこの体はもう止められない。
そして、ただただ泣いている自分がいるのも分かる。
ああ。私は、これでまた、後悔をするのではないのか。
妊娠したら、この人は、私を、もっと縛るのではないか
ギュッ
グッと持ち上げたあなたの腰を掴み離さず、そのまま動かす。
ひさしぶりのこの感覚。
ごめんなさい、ほんとに、今回ばかりは、ほんとに、妊婦デビューだわ、
でも怒れない。
自分だって、もし涼介が浮気したら怒る。
だから、ほんとに、今回の失点は50:50だ、
1ヶ月後。
お腹に妊娠二週間の赤ちゃんがいた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!