その後、混乱している私を見てお兄ちゃんは呟いた。
そう言って微笑んだ。私は、なんも言えなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今、私はお店にいる。
掃除をしているけど…お兄ちゃんとの話が頭に何度も出てきて…集中出来ない…。
そういうと、お兄ちゃんは立ち上がった。
私の視界からそっと消えた。その後、私は静かに泣いた。
《どっちが本当のお母さん?色々と複雑過ぎる…。》
《現在》
気がつくと目の前は心配そうな目をしたナナが立っていた。
私は、微笑んで頷き…ドアへ向かった。
日が暮れて…街には赤く染まっていた。いつの間に時間が過ぎていたんだ…。
ぼーーっとし過ぎた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
変わらず夜でも客は来る。
ドアが開く度に『いらっしゃいませ!』と声をかけ、注文を聞き回る。
《ドアを開く音》
手にある皿をテーブルに置き、入ってきた客が座ったテーブルに向かう。
……え?
顔を上げて客の方を見る。
ずっと…探していた人…?
そう言うと、目の前に居る人は深く被っていたフードをとり…微笑んだ。
メモ帳をテーブルに置き、すぐさま抱きついた。
私が約束を破ったばかりに…リュウは大変な目に遭ったかもしれない。
だって…あの赤居温泉は、皆から恐れられるキョーナ様がいたのだから。
その後、レオとナナの所に向かって…『見つかりました!』と報告した。
そう言われたので…リュウと話すことにした。
私は、キョーナに捕まったこと。龍が助けてくれたこと。その後のこと…を話した。
そう言うと、ちょっとリュウの顔が曇ったように見えた。…気のせいかな?
リュウは、コップの中にある水を全部飲み干して…そう言った。
棒読みで言い…パチパチパチと手を叩く。
ん?……ちょっと待って…。
『元の世界に帰りたい。』
よく思い出してご覧。兄さんは、なんかの方法でここに来た。
ならば…お兄ちゃんにその道を聞いて…その通りに辿ったら帰られる。
なんだ…簡単なことじゃん。
リュウは、口を開いてぽカーンとしていた。
私は、グッドポーズを作って微笑んだ。
この世のあーだこーだなんての事…どうでもいい。
私には関係ない。知らない。
お母さんが二人いる?ラリーナ?
私は、地球にいるお母さんが本当のお母さんだと思い込む。
自分勝手だな。とか、無責任だな。とか思われたり、ガッカリされるかもしれないけど…別にいい。
勝手に連れてこられて…私こそ何なんだ!っていう話だ。
《なんだぁ……簡単な話じゃんか。》
全てが解決したように思えてきて…ほっとした私の頭に何かが遮ってきた。
前…、なんて名前を言おうか。と悩んでいる時に聞こえた声と同じだ。
私は、ノエルじゃない。沙耶というなまe……
次の瞬間、頭に痛みが走った。
ズキッ!ズキズキ…!!…っ!!
リュウの声は聞こえるけど…何も見えない。
真っ暗だ。何……これ??
何が起こっているの?
少しの光が見えたと思えば…1人の女の人がこっちに来る。
綺麗な金色の髪の毛。白い肌。緑の瞳をしていた。
その人は、泣いていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
女の人は消え…リュウが見えた。
リュウは、顔をかしげた。さっきのは私だけが見えたの?
《ドアを開く音。》
ドアの方に振り返ると、お兄ちゃんが立っていた。
次の瞬間、怒鳴られた。
お兄ちゃんが睨む先には…リュウが立っていた。
私は、さっぱり何が起こったのか分からなかった。次々と……何?
リュウは、微笑んで顔をかしげた。
『ノエル…。………またね。』
『ラリーナ様。お時間です。』ーーーーーーー。
《どうやらそう簡単には帰らせてくれないようです。》
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。