どう反応すればいいのか分からず焦る私…。
苦笑いを浮かべる私に対し、心配そうな顔をする女の人。
夜の風が吹く…。
雲が動き…隠れていた月が顔を出す…。
月の光で少しずつ……
目の前に居る人の顔が見えてくる。
前髪をあげて…一つ三つ編みをしていて…
優しい笑顔でこう言った。
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その人が働いているというお店に連れてくれた。
レンガで出来ていて、おしゃれなお店だった。
中に入ると…中も予想通り、おしゃれで…木で作られた机に椅子がずらりと並んであった。
棚には酒などが置いてあった。
ニッと笑いながら、「そこらに座っといて」と言う。
水を入れて持ってくると女の人も腰をおろした。
水が入ってるコップを見つめて…唾を飲み込んで口を開く。
その時、心からほっとした。
飲食店で働かせてもらえるなんて、運がよかった。
客も来るから、情報も得れやすい…。
リュウも、たまたまこの店に来るかもしれない。
疑問の3つに関しての話も入ってくるかもしれない。
店をやっているのは夜だけらしいから、昼の間には時間が空き、リュウを探すことが出来る。
コップの中の氷が少しだけ溶けて、カランコロンと音がする。
「お互い大変やね」と微笑む。
凄い…。この人…会ったばかりちょっと話しただけなのに…ほっと安心出来て暖かい気持ちになれる。
どんな偽名にしようか。と悩んでいる時、ズキッと頭に痛みが走って…
聞こえた優しい声。透き通った声。
「ノエル…。」
懐かしいような気もした。でも記憶はない。
他に名前が思い浮かべなかったから、この名前にした。
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ガシャーン!!!!
ドンッ!!!!
資料の紙は、ばらつき…
皿や、ガラスは沢山割れ…、
全てが荒れていた。
僕は、やめるよう声をかけるしかなかった。
また1つのガラスが割れる。
全ては、僕の責任だ。僕がちゃんとしなかったからこうなってしまった。
ドンッ!!!!
キョーナ様は、もうめちゃくちゃだ。
前は、もっと…優しくて…いい人だったのに…。
無理はないだろう…。全ては…………。
ぼさぼさな髪の毛で…助けを求めるのように僕にしがみついてくる。
僕だって…殺すと言うのはあんまりいいことでは無いぐらい知っている。
とうとう僕は、なんも言えなくなった。
何年も同じことを何回も言われ続けてきたからだ。
少し落ち着いたのかキョーナ様は、立ち上がると…窓に向かった。
ふらふらした足で…必死に歩くのを見るだけで…僕は辛かった。
ジッと、冷たい目で僕を睨む。
今夜は、いつもより冷えそうだ。
いつになれば…この問題は、解決されるのだろうか。
それは、僕も…誰にも知らないーー。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!