〜拓也兄side〜
本当は、沙耶も一緒に来た方がいいんだが…。
あのキョーナ様なんだ。何をするか分からない。
たった一人の妹だからこそ危険な目を合わさせたくない。
キョーナは、ラリーナの姉なのだから何か情報は得られるのだろう。と考え…僕はそこに向かうことを決心したんだ。
そんなことを考えている間に、もうキョーナの部屋前までやって来た。
ドアを開ける音 ))
ジッと睨みつける先にはワインを手に座っている長い黒髪をした若い女の人がいた。
ワインを机にそっと置き…キョーナは、立ち上がる。
ナツ…。それは、この世での僕の真の名前だ。
キョーナの顔が冷たくなっていった。
唇を噛み…カツカツと右足を鳴らす。
部下って…リュウか。
僕らを殺した…? 一体何言ってるんだ…。
も、もしかして…あいつは…。
ドンッ!!! ))
キョーナは、机を叩き…叫んだ。
ジッと今度はキョーナが僕を睨みつけてきた。
ガシャーン!!! ))
ラリーナという名を挙げた途端に、机の上にあったグラスや、ワインを地面に叩き割った。
赤ワインがじゅうたんに染み込んでいく。
まるで闇に覆われていくのように…。
この言葉からすると…キョーナは、どうやらラリーナの事が嫌いみたいだ。
でもどうしてだろう?
そして、あの男に似ていると言った。
そういえばラリーナの旦那。僕の真の父を…
僕は知らないー。
その人も、キョーナと関わりがあったようだ。
そんな事より、今はラリーナの事だ。
姉ならなんか知ってるはずだろう。
そう叫びながら、キョーナは体を崩した。
驚く事ばかり口にするから全く訳が分からなくなった。
キョーナは、嘲笑いながら顔を上げて僕を見た。
僕は睨み続けた。
キョーナは、今までと違った悲しそうな目でこう言った。
ほんの一瞬だけど…こんな事を思った僕を殴りたいけど…
真の親を悪く言う腹立つ人にちょっとだけ情けをかけてしまった。
あぁ、この人はなんかされて変わってしまった人だけで…本当は可哀想な人じゃないか?…ってな。
何かもめちゃくちゃで…何かに縛れているようで苦しんでいる女の人しか見れなかった。
そこでちょっとした昔話が始まった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!