『人間だァ!!!逃げたぞぉ!!』
すぐに騒ぎは、大きくなり…
みんなキョロキョロしては、走っては、私を探している…。
私は、道路の外れの狭い道で身を隠していた。
手首が痛いよ…。皮が剥けて血が出ている…。
怖いよ……ここはどこ??
お腹がすいた…。
『あーあ、せっかく作ったのにぃ…』
朝、ドアを閉める前に聞こえたお母さんの言葉。
あー、あの時…無理やりでも食べれば良かったのかもしれない。
もしかしたら…もう帰られないのかもしれ…
いやいやいや!帰るんだ!!
でも、《最悪な場合》を《帰られない場合》を思い浮かべては…目が熱くなる。
冷たい風が頬を撫でていく…。
上を向けば…真っ暗で星が広がってる夜空がある。
今、何時?
いつなの?
ここはどこ?
ここに、人間はいないの?
帰る道は?
どうしてこうなったの?
ねぇ……
誰か……
教えてよ…。
またまた目が熱くなって…私は、俯いた。
体育座りで膝と膝の間に顔を埋めた。
……帰りたい。
《足音》
《近づいてくる足音》
誰……?
《足が止まる音》
私…処分されるのかなぁ?
もう動けないし………、今逃げても無理だろうなぁ…。
『おい、そこのお前。』
低い声…。さっきの狼さんかな…?
『そんな所で、何してんだ?』
私は、ゆっくり顔を上げた。
日本と似ているGパン…。
不思議な柄のTシャツ…。
そして、黒いマフラーを巻いていた。
闇のように真っ黒な目。
それなのに雪のように白い髪の毛…。
私と、同じ年ぐらいの男だった。
優しい目…ではなく、冷たい目で私を見下していた。
1つの1つの言葉が…
私にとっては冷たく聞こえた。
何にも信じられそうになかった。
この人も…優しそうにして私を《山丸事務所?》っていう所に届けるのかな?
なんも答えられなかったから、イラついたのか
目の前の人は、舌打ちをした。
何言ってるんだ?私は……。
目の前の人は、ゆっくりとしゃがむと…
やっぱり、金が貰えるんだ。
だからみんなは、私を探して…
山丸事務所に届けて…金を貰おうとしてるのかな?
ため息をつきながら立ち上がると…
驚いて顔を上げてちゃんと顔を見た。
意外と綺麗な顔だった。
助けてくれるのかな?
それとも、山丸事務所に届けるため?
どうかいい方だと…
そうだと信じて…力を絞って立ち上がる…。
【今は、そうするしか方法はないと思ったから。】
そう言うと…首に巻いていたマフラーをとって
私の首あたりにぐるぐると巻いた。
ちょっと体が冷えていたから…。
マフラーが首に巻いてあるだけで…暖かく感じる…。
口は悪いけど…優しそうなのかな……?
私は、口を開いて1つの事を聞く…。
意外と教えてくれた…。
言ってくれないと思っていたから…ちょっとだけ驚いた。
ちょっとイラッと来たけど…今は、この世にいるからには…
彼の言うことを…従った方がいいかもしれない。
『行くぞ、ついて来い。』
と言いながら、何もなかったように…まだまだ私の事で騒ぐ街の道路へ踏み出していく。
彼の…リュウの背中を追って 私も、首に巻いてるマフラーを握って…
狭い道から、外へ足を踏み出した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。