私がそう呼びかけると、リュウは、笑い出した。
私は伸ばしていた手を止めた。
白髪の前髪をあげて…リュウは、微笑む。
今まで見たことの無い悪意にまみれた笑顔。
突然変わった話し方ー。
私は、話についていけず…ただ見ているだけだった。
微笑みながら、私に近づいてき…しゃがんだ。
嫌な予感がし…それを止めるのようにこっちに走ってくる兄をリュウは、何かを呟き…兄の動きを止めた。
それと同時に私達3人以外は、眠りに落ちるように倒れていった。
邪魔者がいなくなると…リュウは、嘲笑った。
そういや、兄も「ラリーナ」という人が私たちの本当のお母さんだって言っていたな…。
そう尋ねると…ちょっと表情が暗くなったように見えた。
恐る恐る尋ねると…ゾッとなる答えが返ってきた。
しかも、笑顔で言うのだ。
右手をあげ…何かを呟くとわたしを宙に浮かべた。
そんなことに耳を傾けてもらえる間もなく…私と兄は、リュウに操られるのように…
飛ばされた。
店のドアが開き、そこから私達は放り出される。
私は、必死に手を伸ばす。こんなリュウをみたのは初めてだった。
怖くて…悪魔のようで…悲しそうに見えた。
そんなリュウを1人にしたくなくて必死に手を伸ばしたんだ。
でも、この手と…心の叫びは届かなかった。
笑顔で見送るリュウの姿も小さくなって…
店も小さくなって…街中の光も見えて…
夜空へ私達は浮かんでいった。
夜空の中で必死にお兄ちゃんの方へ手を伸ばす。
指が当たった瞬間…思いっきり手を握った。
怖くて泣き出した涙も上へ飛んでいく。
そう…私達は落ちていたのだ。
下は、でかい木がたくさん集まった山ー。
兄の手をちゃんと離さぬように握った。
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見えなくなった2人が飛んでいった夜空を見つめながら呟いた。
僕は、どっちを守りたいのだ?
沙耶か?それとも……キョーナ様か?
いや、ラリーナ様かもしれない。
もう化けの皮は剥がれた。作り顔をしなくていいんだ。あぁ、良かったんじゃないか。
もう2人に会うこともないだろう。
さて、赤居温泉へ戻ろうかー。
指をパチンと鳴らし…温泉へ足を動かした。
《店》
次々と目が覚ましていき…まぁいいか。と変わらない夜を過ごす。
開いているドアのところに向かい…ナナは、空へ見上げたー。
『もう会えない…。』そんな感じがした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。