第18話

化けの皮
151
2019/03/11 09:47
朝倉 沙耶
り、リュウ?
私がそう呼びかけると、リュウは、笑い出した。
リュウ
フハハハっ!!
私は伸ばしていた手を止めた。

白髪の前髪をあげて…リュウは、微笑む。
リュウ
兄様の方は記憶が残っていたのですね?
今まで見たことの無い悪意にまみれた笑顔。

突然変わった話し方ー。
拓也兄
ちょっとな…。
リュウ
それは、それはめんどくさい事になりましたなぁ…?
私は、話についていけず…ただ見ているだけだった。
リュウ
あっ…妹様の方はすっかり忘れているのですね?
朝倉 沙耶
リュウ?何言ってるの?何…?ねぇ……
微笑みながら、私に近づいてき…しゃがんだ。
リュウ
どこまで知っているのかねぇ!??
拓也兄
よせ!!
嫌な予感がし…それを止めるのようにこっちに走ってくる兄をリュウは、何かを呟き…兄の動きを止めた。

それと同時に私達3人以外は、眠りに落ちるように倒れていった。
朝倉 沙耶
ナナ!?
リュウ
ご安心を…眠っているだけです。
リュウ
兄様。この世では魔法やらが使えることをお忘れなく…
邪魔者がいなくなると…リュウは、嘲笑った。
リュウ
ハハっ!!では、言いましょうか…。
リュウ
あなたは、この世の人です。
朝倉 沙耶
…え?
リュウ
そして…キョーナ様の妹…ラリーナ様の娘です。
そういや、兄も「ラリーナ」という人が私たちの本当のお母さんだって言っていたな…。
リュウ
でも正直言って…あなた達はここにいてはならない。
朝倉 沙耶
え、なんで?その…ラリーナ様の娘ならこの世にいてもいい…んじゃないの?
そう尋ねると…ちょっと表情が暗くなったように見えた。
リュウ
色々と複雑なんです。
リュウ
前もって言います。
リュウ
兄様と一緒に今すぐこの世から去りなさい。
朝倉 沙耶
もし、去らなかったら?
恐る恐る尋ねると…ゾッとなる答えが返ってきた。
リュウ
その時は…殺します。
しかも、笑顔で言うのだ。
リュウ
では、さようなら。
右手をあげ…何かを呟くとわたしを宙に浮かべた。
朝倉 沙耶
うわっ!?待って!リュウ!
朝倉 沙耶
まだ聞きたいことが…
そんなことに耳を傾けてもらえる間もなく…私と兄は、リュウに操られるのように…



飛ばされた。

店のドアが開き、そこから私達は放り出される。

私は、必死に手を伸ばす。こんなリュウをみたのは初めてだった。

怖くて…悪魔のようで…悲しそうに見えた。


朝倉 沙耶
リュウ…!!!
そんなリュウを1人にしたくなくて必死に手を伸ばしたんだ。


でも、この手と…心の叫びは届かなかった。



笑顔で見送るリュウの姿も小さくなって…

店も小さくなって…街中の光も見えて…

夜空へ私達は浮かんでいった。
朝倉 沙耶
お兄ちゃん!お兄ちゃん…!
夜空の中で必死にお兄ちゃんの方へ手を伸ばす。
拓也兄
くっ……もう少しだ!
指が当たった瞬間…思いっきり手を握った。
朝倉 沙耶
私達…どこに行くの…?
怖くて泣き出した涙も上へ飛んでいく。



そう…私達は落ちていたのだ。

下は、でかい木がたくさん集まった山ー。
朝倉 沙耶
い、嫌だァー!!!!!!!
兄の手をちゃんと離さぬように握った。




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リュウ
あーあ、これで2回目になったなぁ…
見えなくなった2人が飛んでいった夜空を見つめながら呟いた。
リュウ
逃がすのはー。
僕は、どっちを守りたいのだ?


沙耶か?それとも……キョーナ様か?

いや、ラリーナ様かもしれない。

もう化けの皮は剥がれた。作り顔をしなくていいんだ。あぁ、良かったんじゃないか。

もう2人に会うこともないだろう。

さて、赤居温泉へ戻ろうかー。
リュウ
おっと、忘れてはいけない。
指をパチンと鳴らし…温泉へ足を動かした。



《店》
ナナ
んー?あれ?私達なんで寝ていたの?
レオ
うむっ?なんでだろうな。
次々と目が覚ましていき…まぁいいか。と変わらない夜を過ごす。
ナナ
あれ?ノエルは…?
開いているドアのところに向かい…ナナは、空へ見上げたー。




『もう会えない…。』そんな感じがした。


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