第20話

別れ
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2019/03/30 04:26
元の世界へ…戻る?

でも、何故私がここに連れてこられたのか…

本当の自分の事とか…分からずのままに済む…。


《戻るのは、後でも大丈夫じゃないの?》

……知りたい。

本当の自分は……何者なのか。
朝倉 沙耶
また戻ったら…殺されるかもよ?
拓也兄
俺には、その覚悟がある。
朝倉 沙耶
それなら…私も行く。
お兄ちゃんの手を貸さずに自分の足で立ち上がった。

そして、精一杯笑ってみせた。
拓也兄
…!?……それで本当にいいんだな?
もう戻れない。

私は、今から危ない道を歩いていくことになる。
朝倉 沙耶
うん。自分で決めたことだから!

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そこから、山を降りて…別の街に寄り…必要な物を買いまくった。

金は、意外と兄がたくさん持っていた。
拓也兄
はい、マント。
朝倉 沙耶
ありがと、はい。
見立たない地味色の深緑のマントを被せる。

そして、バッグから紐と小さな剣を取り出した。
朝倉 沙耶
ここは、銃とか売ってないんだね
拓也兄
それがあればいい。
拓也兄
殺すことが目的じゃないだろ?
拓也兄
自分自身を守られるのならいいんだ。
太陽の光が当たり、光る剣を布で覆い…腰にかけた。
朝倉 沙耶
ねえ、今からどうするの?
拓也兄
リュウに会いに行く。
朝倉 沙耶
!?
拓也兄
記憶の中では…ラリーナの隣にいたのはリュウだ。
拓也兄
ならば、何かを知っているはずだ。
朝倉 沙耶
そうだね…。でもその前に寄りたい所があるの。


〜〜見慣れた看板。
まだ午前なのだから美味しそうな匂いはないのだけど…。

大好きな店の前に私は、足を止めていた。
((ガチャー。
朝倉 沙耶
失礼します…。ナナ?いますか?
なんも返事はない。しーんと静けさが広まったキッチン。
朝倉 沙耶
やっぱり…居ないか。
キッチンを通して、少しの間過ごした自分の部屋に向かった。

頭まで被ったマントを少し外して、周りを見つめた。


タンスを開け、今まで働いて少しだけ溜まったお金を取り出した。
朝倉 沙耶
それで…
ナナ
誰!?
声がし、さっさと振り返るとそこは棒を持ったナナがいた。
ナナ
ノ、ノエル?
私の顔を見て、怪しい人じゃないと知って安心したのか…棒を離して私のところに飛びついてきた。
朝倉 沙耶
ナナ…!
ナナ
ノエル!何かあったの?
ナナ
顔は傷があるしさ…突然消えるしさ…何があったの!?
ナナは、心が優しい人だ。

少しの変化に気がつき、優しい手を伸ばしてくれる。
初めて出会った時もそうだったね。ナナ。
朝倉 沙耶
ナナ…。ごめんね、私…
少し震える私の手をしっかり握りながら話を聞くナナ。
まるで自分のことのように心配してくれる。
朝倉 沙耶
もう行かないと…。
ナナ
どこに行くの?ねぇ…もう会えない気がするの…。
ナナ
ノエル!何かを抱えてるいるんでしょう?
ナナ
話して!力になるから!
朝倉 沙耶
ダメだよ…ナナまで危ない目に合わられない。
昨夜なんて…ナナは、リュウに眠させられた。

眠るだけで良かったのだけど…今度はどうなるのか分からない。
ナナ
ノエル…。ここの人じゃないんでしょう?
朝倉 沙耶
!?
突然告げられる言葉に私は、固まった。
ナナ
知っていたの…初めて出会った時から…
ナナ
あぁ、この人は他の世界の人なんだなぁ。って…。
朝倉 沙耶
………。
ナナ
だったら、こんな世界の人として…なんか助けてあげたかったの。
ナナ
ここって…なんだかんだおかしいでしょ?
微笑むけど…目が悲しそうだった。

そこまで言われるとは思わなくて…私は、ナナの優しさに嬉しさが溢れだしてきた。
朝倉 沙耶
ナナ…。ありがとう。
朝倉 沙耶
だったら、1つ…教えてくれない?
ナナは、私の手から…手を離し…頷いた。
朝倉 沙耶
リュウって言う人知っている?
ナナ
リ、リュウ?
朝倉 沙耶
うん、私が探しているといった人の名前。
リュウ という名前を挙げてから、ナナの顔はみるみる酷くなっていった。
ナナ
ま、まさか?……あのリュウ?
朝倉 沙耶
ほら、銀髪をして…
ナナ
ノエル、その以上言わないで。
ちょっと冷たい言い方に私は不安になった。

なんか禁断の蓋を開けてしまったみたいな気分だった。

兄は、外で待っているー。何なら今すぐ兄を連れて来たかったぐらいだ。
ナナ
あなたは、リュウに…?
朝倉 沙耶
会いたいの。どこにいるのか教えて欲しい。
ナナ
あ………
朝倉 沙耶
覚悟は、出来ている。お願い、教えて。
震える腕を必死に堪えながら…ナナは、口を開いた。
ナナ
リュウはね、あの…あの……キョーナ様の部下よ?
朝倉 沙耶
えっ…?
リュウが…キョーナ様の部下?

あの…人間を嫌う恐ろしい…あの人の……?


その時、ふと思った。リュウと一緒に赤居温泉に行った。
人間の匂いを消すためと言ったが…、本当は私をキョーナ様の所へ連れ出すためだったら?
ナナ
そんな所に…行くの?
キョーナ様の部下だと知り、不安が溢れだしてくるけど…

それでも答えは決まっている。



知りたいことがあるから。私はー、
朝倉 沙耶
うん、行くよ。
微笑んで答えた。


ナナも、その以上言っても無理だろうと理解していたので…微笑んで、
ナナ
そっか、気をつけてね。
だけを 答えた。
朝倉 沙耶
もし、無事に終わったらまた戻るね。
朝倉 沙耶
でも、万が一の時のために…
朝倉 沙耶
一応、ここで別れをしてもいいかな?
いいよ。と言わずに…ナナは、もう一度強く抱きしめてきた。
ナナ
絶対に戻ってきてね。待ってるから。
ナナ
レオには、私から話しとく。
朝倉 沙耶
ありがとう、大好き…ナナ。
すすり泣き声が微かに聞こえた。

ほんわりとしたナナの花の匂いに包まれて…私は、心が穏やかになった。




そして、暖かい体温も離れていき…

手も離して…

優しい視線を感じながら…私は、マントを深く被って…









この場から、離れた。

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